作業服大手「ワークマン」が一般消費者向けのカジュアル・アウトドア専門店「ワークマンプラス」の出店拡大を図り、好調な業績を続けているが、そんな急成長を遂げるワークマンゆえの弱点も見え始めている。ファッションジャーナリストの南充浩氏が、敢えてワークマンの“死角”を指摘する。
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不振続きのアパレル業界において、作業服専門店から急成長したワークマンの躍進ぶりは最も明るい話題のひとつといえます。
昨年11月に発表されたワークマンの2020年3月期の第2四半期決算によると、営業収入は前年前期比45.2%増の418億8600万円、営業利益86億4200万円(同55.1%増)、経常利益93億5700万円(同51.8%増)とほとんど倍増ペースで大幅に伸びています。
凄まじい成長ぶりで、これほど急激に成長しているアパレル企業は数少ない存在です。それゆえにワークマンには多くの期待が寄せられているのですが、現状のままでは決して“安全運航”とは呼べない店舗運営の仕組みや弱点もいくつか見受けられます。
そこで、急成長を遂げているワークマンの今後懸念される点について考えてみたいと思います。
まず、ワークマン躍進の最大の原動力は、一般消費者向けのカジュアル・アウトドア業態「ワークマンプラス」の好調にあることは衆目の一致するところです。低価格でありながら高機能な商品が一般消費者に受けに受けている状態です。
ではどうして、低価格+高機能な商品を販売できるのかというと、理由は簡単です。ワークマンはもともと作業服専門店です。作業服業界というのはワークマンに限らず、どのメーカーもどの店も低価格+高機能な商材を販売しなければ生き残れない世界なのです。
作業服、ワーキングユニフォームというのは、屋外の仕事も多い現場作業員が着用するため、第一に保温、吸水速乾、防風、丈夫さといった高機能さが求められます。まったく機能性のないファッションウェアを着用して業務をすることは不可能です。
そして、業務が過酷な人は作業服が破損して買い替える機会も増えるため、低価格でなくては話になりません。通常のカジュアル服やファッション服は「嗜好品」の側面が強いため高価格でも売れますが、作業服は着たくて着ているわけではありませんから、それが高価格だと誰も購入しようと思いません。安ければ安いほど喜ばれるのです。
ですからワークマンに限らず、作業服業界というのはもう何十年にもわたって「低価格+高機能」な商品を企画生産販売し続けてきたのです。ワークマンはその業界基準に沿っているということになります。