「闇営業」問題から約9か月。宮迫博之や田村亮ら渦中の芸人たちが“復活への途”をそれぞれに歩み始める中、漫才師としての再起に並々ならぬ思いで臨むコンビがいる。かつて「M-1最大の革命児」と呼ばれながら優勝を逃し、その後、闇営業問題で謹慎生活を送ったスリムクラブの2人・真栄田賢と内間政成──。ノンフィクションライターの中村計氏が、謹慎期間を終えて再起を目指す2人の思いを聞いた。
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◆「漫才で取り返せ」
(2019年)8月に入ると、真栄田は大先輩の漫才師・島田洋七から呼び出しを受けた。宿泊中のウエスティンホテル東京の部屋に来いとのことだった。部屋に到着するなり、こんな話をされた。
「昨日、(島田)紳助と会ってな。お前らの話になったんよ。紳助は『おれはよかったと思うで。チャンスや』って。『こんなことでも起きなかったら、あいつら、今もM-1準優勝の余力で、適当にのらりくらりやってたやろ。あいつら、漫才でここまで来たんやから、漫才で取り返せって言うといてくれ』と。
漫才、ちゃんとやってるんか? 2着までいったんなら、1着目指さんかい」
わずかな時間だったが、真栄田の腹は決まった。M-1のエントリー締め切りは8月31日だ。島田の言葉を聞くまでは立場上、自粛すべきかとも考えたが、それは単にM-1から逃げたがっているだけだった。