ビジネス

日本の在宅勤務に「3つの壁」 管理職の存在意義に疑問符も

コロナショック終息後もテレワークは根付くのか

コロナショック終息後もテレワークは根付くのか

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、在宅勤務を可能にするテレワークを実施する企業が増えている。国が全国の小中高校の一斉休校を要請したため、大手企業を中心にその動きはさらに広がりを見せている。しかし、今回の経験を得て、日本企業に在宅勤務の形態が根付くかというと、そう簡単ではなさそうだ。組織論に詳しい同志社大学政策学部教授の太田肇氏が、在宅勤務普及の前に立ちはだかる3つの「壁」を指摘する。

 * * *
 新型コロナウイルス対策の一環として、大企業を中心にテレワークを取り入れる動きが広がっている。在宅勤務などテレワークは感染防止対策として有効なだけでなく、災害時への備え、通勤混雑の緩和、それに子育てをはじめワークライフバランスの推進といったさまざまな効果が期待されている。そのため、これを機にわが国でもテレワークが定着するのではないかと期待する人も多い。

 果たして、これをきっかけに日本でもテレワークが根付くだろうか? 私はかなり懐疑的だ。テレワーク普及の前にいくつもの壁があるからだ。それを乗り越えない限り、震災の時と同じように一時的な“緊急避難”で終わってしまう。

 では、その「壁」とは何か? 第1にあげられるのは「技術の壁」だ。

 確かに高速大容量の光ファイバーなどIT(情報通信技術)の発達により、自宅などでも仕事ができる技術的な環境は整ってきた。ノートパソコン一台あればこなせるような仕事は少なくない。

 ただ、それでもセキュリティの問題とか、機器や通信費など費用の問題、それに非正社員が社内のネットワークには入れないといった問題は残る。また欧米などと違って自宅の近くにはサテライトオフィスも少ないので、自宅に仕事をする場所がない人は困ってしまう。

 第2に、「仕事の壁」があげられる。

 欧米では一人ひとりの職務が明確に決められている。またオフィスも、一人ひとりのデスクは仕切りで分けられている。そのため会社で仕事をしようが、外で仕事をしようが大差はない。

 それに対し日本企業では個人の分担はかなり曖昧で、課や係といった集団で行う仕事が大きな部分を占めている。そのため、同じ職場にいないと一緒に事務作業をしたり、他人の仕事を手伝ったりするのに不都合が生じる。次々に飛び込んでくる仕事や突発的な業務を、誰がどう処理するかといった問題も残る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
回顧録を上梓した元公安調査庁長官の緒方重威氏
元公安調査庁長官が明かす、幻の“昭和天皇暗殺計画” 桐島聡が所属した東アジア反日武装戦線が企てたお召し列車爆破計画「レインボー作戦」はなぜ未遂に終わったか
週刊ポスト
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト