新型コロナウイルスの感染拡大で、政府は全国の学校に臨時休校を要請した。これを受けて、酪農家の家庭で育った作家の河崎秋子氏には、ある「心配」がよぎった。河崎氏は北海道別海町生まれで、大学卒業後にニュージーランドで牧羊を学び、実家の酪農従業員の傍ら、2019年まで緬羊を飼育・出荷していた。
これまで北海道新聞文学賞、三浦綾子文学賞、JRA賞馬事文化賞、大藪春彦賞など、数々の文学賞を受賞し、現在、週刊ポストで短期集中ノンフィクション『羊飼い終了記念日』を連載している河崎氏が、元酪農従業員、また元羊飼いとして、感染拡大が広がった北海道から綴る。
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現在、羊飼いと実家の酪農従業員をやめた私は、今回の新型コロナウイルス騒動を十勝地方で独り暮らしをしながら見守っている。仕事は在宅業務のため、二月頭の時点で食料と生活用品を買い込み(一人なので量を買い占めてはいません)、鎮静化するまでなるべく家に引きこもろうと決めた。
三月に予定していた上京もキャンセルし、本当に人と会う機会がない日々だが、もともと僻地の農家で黙々と仕事をしていた身なのであまり寂しくはない。そもそも、北海道民は冬になると吹雪で引きこもらねばならないという状況がしばしば発生するので、他地域よりは精神的な引きこもり耐性が高いような気がしている(※個人の感想です)。
そんな、自分が感染するリスクをなるべく減らしながら過ごしている中、全国的にはどんどん感染者が広がっている。しかも、他の都府県と比べて北海道の感染者数がかなり多い。私が住んでいる地域からも感染者が出てしまい、正直驚いている。
元羊飼いとしては、日本全体で外食に出かける人が少なくなっていることから、羊肉を出荷していたレストランは大丈夫だろうかと心配している。付き合いのあったお店だけではなく、飲食店関係の方は皆さん大変な思いをされていることだろう。今は外出自粛などの流れでお店に行くこともなかなかままならないが、テイクアウトや中食などをうまく活用させてもらいつつ、騒動が収まった時には盛大に外食して貢献できれば、と思っている。