相続というものは、想像もしなかったトラブルが生じるもの。与り知らない共有不動産の存在が発覚した場合、現金化するにはどうすればよいのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
父の死後、遺書に私の知らない一軒家の不動産が記されていました。購入の背景がわからず、さらに困惑しているのが、その一軒家が共有不動産であり、もうひとりの共有者に連絡が取れないこと。私は売却したいのですが、共有者が行方不明の場合、この先のスムーズな手続きの進め方を教えてください。
【回答】
共有物の処分は、共有者全員の同意が得られないとできません。共有物を単独の所有にすれば売却も可能ですが、共有の経過がわからないので、単独所有を主張する根拠も見当たりません。もっとも、共有と知らずに自分のものだと思い、不動産を使用していれば、相続を機会に自分の所有との意思で占有を開始したことになり、20年間で時効取得する可能性があります。しかし、ご質問の例では相続したばかりですから無理です。
ただし、共有者は合意で制限しない限り、いつでも共有相手に共有物を分割することを請求でき、協議が整わないときには、裁判所に共有物を分割するよう申立てができます(共有物分割の訴え)。