相手が行方不明でも、裁判提起は可能です。裁判提起には被告の住所は必須の要件ですが、どうしても所在がわからない場合に備え、公示送達という制度があります。これは裁判所が納得する十分な調査を尽くしても所在がわからない場合、裁判所の掲示板に訴状と呼出状を掲示し、送達があったものと見なす制度となります。
いわゆる欠席判決とは違い、原告は権利の根拠を証拠で立証する必要があります。この点、共有物分割請求は共有関係の証明だけで足り、それは通常登記から事実上推定されます。分割の方法としては、現物を共有持分の割合で分ける現物分割が原則です。
狭隘地(きょうあいち)など現物分割で分けては価値がなくなる場合や一棟の建物で分割できないときは、裁判所の競売により共有物を売却して、その代金を持分で分ける方法がとられます。また、持分が小さい共有者がいる場合には、大半の持分を持つ共有者が全部取得して、代償金を支払う分割方法もあります。ともあれ、公示送達の申立てができるような調査が必要です。弁護士に相談するのがよいでしょう。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2020年3月27日号