新型コロナウイルス感染拡大を受け、3月2日から全国の小中高校の98%が一斉臨時休校となった。入学式の準備はすすめられていたことから、4月からはいつもどおりに学校へ……と思っていたら、東京都内の感染者が急増し関東の都県知事が相次いで不要不急の外出をしないよう求める事態となった。またもや自宅から出られなくなる可能性が高まってきた子供たちは、ネットとどのように付き合い、どのような問題が生じたのか。元教員で子供とネットトラブルに詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが解説する。
* * *
◆一人で過ごす子供がYouTube動画・ゲーム三昧に
突然の休校で、多くの保護者や子供たちが混乱に巻き込まれ、大騒動となったことは記憶に新しい。通常の休みとは違い、(1)期間が長く突然、(2)子供だけで過ごすことも多い、(3)病欠での出席停止と違い子供は健康、(4)塾や習い事、子供向け施設も臨時休講・閉館で行き場がない、(5)外で子供が遊んでいると通報されることがあるという特徴があった。
休校から約十日後に文部科学省が「屋外での運動などは問題ない」旨の見解を出すまで、多くの子供が毎日、自宅内で過ごさねばならなかった。健康な子供が、行き場もなく延々と自宅で過ごすとどうなるか。ストレスをためる様子が簡単に想像つくだろう。
小学生の子供を持つ30代女性は、休校が始まってしばらく、一日中、家にいる子供たちをどのように過ごさせるべきか悩んでいた。オンライン学習コンテンツや電子書籍読み物などを無料公開してくれた企業は多い。しかし、そういったものを利用することを期待してタブレットやPCを子供に使わせても、親が願うような使い方をしてくれないからだ。
「学びになる、いいものがたくさん公開されているけれど、公開の仕方に共働き家庭は想定されていないように感じる。大人が手伝わないと利用しづらいものが多かったんです。うちの子は日中一人きりだから、これまで利用したことがあって使い勝手がよいゲームやYouTube動画ばかり利用している。そばについていられれば見せたいものへ誘導したり、時間を区切ることもできるけれど、それも難しい。どうしたらいいのか……」
◆端末ごとに用意された利用時間制限機能
そばにつききりでいなくても、実は、それぞれの端末に用意されている利用時間制限機能で、長時間の利用を食い止めることができる。iPadなどのiOS端末なら「スクリーンタイム」、Android端末では「ファミリーリンク」機能を使えば、各アプリ、ウェブごとに利用時間を決めたり、閲覧コンテンツを制限できる。どちらも無料サービスで、申し込みの必要もなく利用できる。
だが、この休校時期に小学生が親から渡されているタブレットやスマホをみると、とくに制限を設定せず、自由に使える状態のものが多かった。前述の子供がYouTubeやゲームを一日中、使い続けると悩む女性に「スクリーンタイム」や「ファミリーリンク」の存在を伝えたところ、「えっ、そんなに便利な機能があったなんて」と驚いていた。
「そもそも子供にネットやゲームを使わせなければいいのに」と考えるかもしれないが、学校に行けず友だちにも会えず外にも出られない子供たちが家の中でできることは限られている。ストレスをためて荒れる子供も多く、普段はあまり利用させない家庭でも、仕方なく許可した例が多かったようだ。
前述のような制限できる便利機能を利用できている家庭でも、子供のインターネット利用は保護者がいる時のみ、という家庭もあった。端末にパスワードロックをかけたり、利用時間制限していたというが、何が問題だったのか。やはり小学生の子供を持つ40代主婦は、「子供の行動が予想を上回った」と苦笑交じりに言う。
「タブレットにパスワードをかけておいたのに、子供がこっそり解除して使いこなしていました。どうやってパスワードがわかったのか」
子供が夢中になったときの集中力は、大人の想像を超えている。パスワード解除のために、大人が動かす指の位置を注意深く観察するなどして類推し、信じられないような根気の良さで解読してしまったらしい。やることがない子供たちは、ゲームやYouTube動画に対して執念を燃やしていたというわけだ。他にも、指の脂の跡で類推した子供や、パスワードのすべての組み合わせを試して破った子供の話も聞いた。