誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、馬券のエンターテインメント性についてお届けする。
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大きな馬券を取らなきゃ。昨日はプラス、今日はマイナスなんてチマチマやってたら、一生JRAに勝てない──と知人はのたまう。
彼は昨年3連単の穴を的中させ、その貯えで勝負している。説得力に富む御説を耳にしながら、私はあるエッセイを思い起こすのだった。
若き僧侶が説く人生指南、『考えない練習』(小池龍之介/小学館文庫)。喜びは大きすぎてはいけないという。脳は快感を欲し、さらに強い喜びを追求する。まあ、中毒ですね。
そこで競馬だ。的中の瞬間、脳に快感物質が駆け巡る。馬券によって分泌量は変わりそうで、配当が大きければ快感物質も大放出だろう。3連複的中でドパーッ。3連単なら大ドパーッ。WIN5なんて最大級である。それでメデタシじゃなくて、脳は「もっともっと!」とくる。なるほどと頷く諸賢も多いのではなかろうか。
幸か不幸か、私は大ドパーッ未経験。せいぜい単複、馬連だが、それでも十分に頭のモヤが晴れる。特に買い目を絞り込んでの的中は堪えられない。だからもし高配当の3連単を当てたらと思うと…脳内はどんな塩梅になるのだろう。