新型コロナの感染拡大はシニア世代の人生設計を狂わせている。国会では年金改正に合わせて労働関係の法律が改正され、来年4月からは企業に「70歳までの雇用延長」が努力義務として課せられる予定だ。本来であれば、「70歳まで働く」のが当たり前になる時代が来年にはやってくるはずだった。
それが感染拡大によって、目先の雇用環境は急速に悪化し、これから一時帰休や雇い止めなどが増えていくと予想される。
「働こうと思っても雇用延長してもらえなくなるんじゃないか」
そう不安に思っている人は多いだろう。しかし、“年金博士”として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏はこう指摘する。
「日本の労働力不足は構造的なものです。当面、新型コロナの感染拡大で雇用環境が非常に厳しくなるのは間違いないでしょうが、感染が終息に向かえば、経済は急速に回復するという見方が強い。そうなれば高齢者の雇用も回復するはずです。
それまでをどうしのぐか。政府は危機対策として企業に雇用調整助成金を大幅に拡大し、雇用保険に加入していない非正規や高齢者を含めて解雇されないようにセーフティネットを張っています」
雇用調整助成金とは、企業の売り上げが減少しても従業員を解雇せず休業や教育訓練をさせた場合に、国が休業手当の一部を助成する制度。今回は特例で1人も解雇しない企業には、社員に支払う休業手当の9割(大企業は75%)を国が負担する。