「パドック解説ワード」ともいうべき決まり文句があり、これを聞くと分かったような気になる。「気合い乗りがいい」「踏み込みが甘い」「子どもっぽい」「やや体が寂しい」などなど。紋切型の言葉が気に入らないのだ。その馬にはその瞬間にしかない無二の特徴があるはず。そこのところを、プロならば的確に言葉にしてほしい。
それと新聞で印を打っている人が、パドック解説で評価せずとも推奨馬に入れていることも。
パドックで分かるのは「状態」で「能力」は別だという。トラックマンは馬の能力を熟知したうえで「状態」を評価するのだ。それで「許容範囲」ってわけか。
パドックからの推奨馬が凡走した場合、そこに触れないのが不文律らしい。敗因を語ってほしいところだが、そんな暇はないのだろう。すぐに次レースのパドックが回る。私たちの意識は先へ先へ。後悔しないところが競馬メンタルの長所かもしれぬ。でも先への栄光のためにも反省は必要だ。気合い乗りの良かった馬がなぜ2桁着順なのか。自分なりにレースレビューをしたい。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年4月17日号