新型コロナウイルス拡大防止のためにテレビ各局ではさまざまな試みを行っているが、その対応がもっとも評価されているのがテレビ東京だ。もともと、番組作りにおいては、低予算でありながら企画力で勝負していることは知られているが、今注目の“テレ東流”について改めて考察した。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
* * *
このところ、「緊急事態宣言」発表時の通常番組放送、『家、ついて行ってイイですか?』の撮影マニュアル公開、ロケ中止で「全員リモート出演」の別番組に変更、「出社率2割以下」を達成……テレビ東京への称賛が続いています。
しかし、テレビ東京が凄いのは新型コロナウイルスへのスピーディーかつ柔軟な対応だけではありません。今春は大半の新作ドラマが放送延期という危機に見舞われる中、テレビ東京は「実写化不可能」と言われた3作品を放送し続けているのです。
なぜテレビ東京は「実写化不可能」と言われた作品を手がけられ、コロナ禍の中でも放送し続けられるのでしょうか。
◆挑戦を後押しするムードが社内に浸透
その「実写化不可能」と言われた作品は、『浦安鉄筋家族』(金曜24時12分~)、『きょうの猫村さん』(水曜24時52分~)、『レンタルなんもしない人』(水曜24時12分~)。
「暴力、タバコ、危険行為など問題シーンばかり」「主人公の猫をどう人物化するのか」「『なんもしない』という制約がドラマ性に欠ける」。「実写化が難しい」と言われる理由はそれぞれですが、けっきょくすべて実現させてしまったことにあらためて驚かされます。
テレビ東京だけがこれらを手がけられる最大の理由は、挑戦を後押しする自由な社風。事実、『浦安鉄筋家族』の藤田絵里花プロデューサーは、これがデビュー作であるにもかかわらず、いきなり問題作に挑戦。藤田プロデューサーは、「一年後、この六本木テレビ東京のビルに私の姿は無いかもしれません…。そんな覚悟で(中略)『テレビ東京にしかできない』いえ、浦安市出身で原作をこよなく愛する『私にしかできない』ドラマ作りにチャレンジしたい」と意欲を語っていました。