飲食店や百貨店、小売店などの営業が徐々に再開し、繁華街にはマスク姿の家族連れや買い物客が集まり、小さくも久々の賑わいが生まれた。この3月以来続いていた張り詰めた緊張が緩み、マスクの下からは笑みがこぼれる。
新型コロナウイルス感染拡大をめぐる政府の緊急事態宣言が5月14日、39県で解除され、緩やかな自粛解除が進み始めた。しかし、このまま一直線で「全面解除」とはいかない。
「感染を収束させるには、ウイルスの抗体を持つ人が人口の50~70%に達する『集団免疫』の獲得が必要だとされます。日本人が集団免疫を獲得するには1~3年ほどかかるという見方が大勢で、その期間は政府が感染の拡大と縮小を注視しながら、外出自粛要請とその解除を繰り返す生活になるはずです」(全国紙科学部記者)
今後は経済活動を徐々に再開させつつ、第二波の影に怯える不安定な日々が続く。
そこで浮かび上がってくるのが、「自粛解除格差」と呼ぶべき事態だ。
いままでは全国民が一律に自粛して一緒に耐え忍んできたが、正常化を進めるなかでは異なる風景が現れる。医療ジャーナリストの石塚集さんが指摘する。
「新型コロナに感染すると高齢者ほど重症化します。これから先、自粛解除が進んでも、高齢者層には引き続き“密”になる集団行動を避けるよう求められる。若い人が自由に動き回れる一方、高齢者は判断を強いられるはずです」
つまり、「自由な生活」と「制限された生活」という格差が生じるのだ。
《若者は外へ 高齢者は家に》。そんな刺激的な見出しが5月13日、朝日新聞に載った。イスラエル・ヘブライ大学の著名なコンピューター科学者であるアムノン・シャシュア教授は、同紙のインタビューの中で、新型コロナの感染防止と経済活動を両立させるため、社会を67才以上や持病を持つ「高リスク群」と、それ以外の「低リスク群」の2つに分け、後者だけ外出自粛を解除することを提唱した。