医療崩壊などのリスクを避けて経済を回すために、市民にある程度の「区別」を強いることはやむを得ないことなのか、その提案は賛否両論を呼んだ。
実はその先に、もう1つ別の分断線が想定されつつある。それは「免疫を持っているかどうか」だ。新型コロナの「免疫」を持っていれば、その後、新たに感染するリスクが少なくなったり、重症化が防げたりするという。つまり、比較的自由に生活ができるようになる。
一方で、免疫を獲得していない人は、感染や重症化リスクが高いので、感染防止のために外出などの行動に制限がかかることになる。そうした考え方が、世界のさまざまなところで検討され始めていて、議論を呼んでいる。
そうなれば、とにかく気になるのは「自分や家族は免疫を持っているのか、持っていないのか」ということだろう。
◆ウイルスの変異でワクチンは作れない
そもそも免疫とは、体内に侵入してきたウイルスや病原体に対抗する防御システムのことを指す。
ウイルスが体内で増殖を始めると、危険を察知した免疫システムが起動して、「抗体」を大量生産する。「抗体」はウイルスの表面にとりついて、細胞への侵入を阻止する。そうすれば発症や重症化を防げる。
国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが説明する。
「抗体は、ウイルスという外敵を攻撃するミサイルのようなものです。たとえ感染しても、効果的なミサイルを生産できれば、ウイルスを撃退できます。そうしたミサイル網がひとたび完成すれば、その後に再び外敵が襲ってきても、何度も繰り返しウイルスを撃退できる。そうした状態を『そのウイルスに対して免疫がある』『免疫を持っている』といいます」
そうした免疫を持つ人が人口の50~70%に達すれば、感染拡大を未然に食い止められるという理論が、冒頭の「集団免疫」である。
それゆえ、どれだけの国民が抗体を持っているかに各国が注目し、欧米を中心に抗体検査が進められ、4月下旬から日本でも始められた。ただし過剰な期待は禁物だ。世界保健機関(WHO)はそうした動きに対し、次のように釘を刺した。
「新型コロナウイルス感染症にかかったほとんどの人は抗体反応を示すようになり、それが一定の防御につながることはあるだろう。ただし、その防御の程度や、その効果がいつまで続くかはまだわかっていない」