プロ野球読売巨人軍の坂本勇人内野手と大城卓三捕手が、新型コロナウイルスに感染していると判明し、6月19日開幕を前に動揺が広がった。球団が希望者全員に対して実施した抗体検査により選手やスタッフ4人に抗体が確認されたためPCR検査を実施、2選手のコロナ陽性が判明した。翌日の再検査では陰性に結果が転じたが、油断がならない状況だ。巨人軍に限らず、最近ではRIZAPグループが社員などに対して抗体検査を始めたり、ソフトバンクグループが中国製の簡易キットを社員やその家族向けに配布するなど「抗体検査」への感心と需要が急速に高まり、医療分野以外からも検査キット販売への参入が相次いでいる。しかし、そのキットの品質にはかなりバラツキがあるようだ。ライターの森鷹久氏が、なぜ抗体検査キット販売が急速に広まっているのかについてリポートする。
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新型コロナウイルス 抗体検査キット販売中──こんな文言が書かれたチラシが都内在住の主婦・山縣知美さん(仮名・50代)宅のポストに投函されたのは、五月下旬のことだった。
「抗体検査ってテレビでも聞いたことあったし、自宅で簡単にできるということだったので問い合わせたんですよね」(山縣さん)
新型コロナウイルスの感染が拡大してから「PCR検査」という言葉を聞かない日はない。
「PCR検査」とは、採取した検体(粘膜など)に、ウイルス物質が含まれているか調査する検査で、その精度は70パーセント程度と言われている。他に「抗原検査」もあり、こちらはPCRと同様に検体中のウイルスの有無を調べるもので、PCR検査より短時間で結果を出せるが、精度は低下する。では「抗体検査」とはなんなのか。
「体内にウイルスに対しての抗体があるかどうかを調べるのが抗体検査で、アメリカ・ニューヨークで実施されたことで、一気に検査の存在が広まりました。州全体と市、両方の感染率が随時、発表されていますが、一時は市民の20%が抗体を有していると報じられました」(大手紙記者)
そもそも抗体とは、特定の異物、たとえばウイルスや細菌を体内から排除するために生まれる物質だ。侵入する異物によって抗体が異なるため、どんな抗体が存在するかで何に感染したことがあるのかを類推できる。つまり、新型コロナウイルスの抗体検査で陽性であれば、すでに感染した過去があると考えられるのだ。抗体があれば免疫を獲得していることが多いため、それに対応したウイルスが再び体内に入ってきても、新たな感染は起こりにくいとみられる。逆に陰性であれば抗体が存在せず免疫も獲得しておらず、感染の可能性は陽性の場合より高い、という。ただし、新型コロナウイルスの場合は、この抗体についての法則があてはまらない可能性があるとも言われている。