1日30分太陽光を浴びてセロトニンを分泌させよう

◆セロトニンの活性を促す太陽光とリズム運動

 では閉じこもり生活で足りないもの、セロトニンを充分に分泌させるためには何が必要なのだろう。

「まず太陽光を浴びること。人間は昼間に活動して、夜眠る生活を1万年以上続けてきて、自律神経もホルモン分泌も、太陽が出ている日中に代謝活動が活発になるように働き、太陽が沈むと休息してエネルギー補給をするように進化・発達してきたのです。朝、カーテンを開けて太陽光を浴びると、網膜から刺激が伝わってセロトニン神経が働き始め、セロトニンが分泌されます。わざわざ外出しなくてもよいのです。庭やベランダで軽く体を動かしたり、室内でも時々窓際に行って明るい外光を浴びたりしてください」

 セロトニン神経が活性化するためには2500~3000ルクス以上の明るさが必要だという。太陽光は晴天で5万~10万ルクス、曇天でも1万ルクス程度はあるが、室内照明では500~1000ルクス程度。窓越しでも太陽の光を浴びることが大事なのだ。また、骨を丈夫にして感染症予防効果も期待されるビタミンDも、太陽光を浴びた皮膚で合成される。高齢者にはますますおすすめだ。

家の近所を一定のリズムを刻みながら歩いてみよう

「もう1つはリズム運動。一定のリズムを刻む活動を意識的にしっかりやることでセロトニンの分泌が促されることがわかっています。いちばん身近なのが歩行、散歩です。一定リズムを刻むことを意識しながら“集中”して“しっかり”、5分から30分継続して歩くのがポイント。

 咀嚼や呼吸もリズム運動だ。ガム噛みや食事中の咀嚼リズムを意識したり、ノリのいい歌を唄う、あるいは読経やヨガなどで腹式呼吸を5分以上続けたりすると、セロトニンが効率よく分泌します」

 元気な日中を支えるセロトニンだが、実は夜の睡眠にも深くかかわっている。

「日中、充分に分泌されたセロトニンのストックは、日没後、睡眠を促すメラトニンの合成に使われます。つまり昼間、太陽光の下でしっかりセロトニンを分泌しておくことでよい眠りが得られ、逆に欠乏していれば不眠になるわけです」

 メラトニンは睡眠を促すだけでなく、活性酸素を除去して老化を防ぎ、免疫機能を増強する作用もあるという。コロナ禍に限らず、閉じこもり気味で活動量の少ない高齢者に、不眠の悩みが多いのもうなずける。

 さらにセロトニンの活性を促すのに有効なのが“グルーミング”、人との触れ合いだ。ハグやマッサージ、ペットをなでるなど皮膚を触れ合うことのほか、おしゃべりなどの心の触れ合いもよいという。

「3密を避けるべきいま、また遠方にいる老親などとは、電話やオンラインで顔を見ながら話すのもおすすめです。SNSなどでの文字のやりとりではダメ。声や顔の表情を見聞きしながら心を通わせることが大事なのです」

電話やビデオ通話でおしゃべりを楽しむことも大切

◆3密を避け、夏に向けてウォーミングアップ

 朝起きて、太陽光を浴びて歩いたり、人と交流したりして、夜ゆっくり睡眠を取る。特別なことは何もないようにも思えるが、コロナ禍をはじめ、高齢者の生活の中では意識しないと失われがちなサイクルだと有田さんは言う。

「天気のよいすがすがしい朝などは、思わず外へ出て、歩きたくなります。自然と太陽の恵みを体が欲しているのです。コロナの影響などで閉じこもった生活をしていたら、まずは散歩などで、ぜひリセットしましょう。セロトニンはじっと動かないでいるとすぐに分泌量が減ってしまいますから、朝日を浴びるところから、昼、夕方など1日3回、薬をのむように(笑い)。歩いたり、歌ったり、ご飯の咀嚼を意識したり。電話やビデオ通話でおしゃべりを楽しみましょう。夜はしっかり眠って体調を整え、熱中症の季節に備えましょう」

◆イラスト/やまなかゆうこ

※女性セブン2020年6月18日号

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