今年の春のグランプリは多士済々フルゲートでの決戦となった。競馬ライターの東田和美氏が分析する。
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異なる路線を歩んできた馬が一堂に会するのが宝塚記念本来の醍醐味。そんなことで同一厩舎による複数頭出しが多い。GⅠのわりにフルゲートになることが少なく、阪神内回りの2200mということで、多少まぎれもある。春競馬のクライマックスでオーナーの意向もあり、GⅠ路線を歩んでこなかったオープン馬でも「出られるのなら」と出走に踏み切るケースもあるようだ。わが出資馬も、かつて準オープンの分際で出走したことがあるぐらいだ。
宝塚記念での同厩舎複数頭出しはこれまで27厩舎が40回。池江泰寿厩舎は2011年の5頭出しを含めて5回とダントツ。複数頭出しを2回以上経験しているのは、平成以降では橋田厩舎と橋口弘次郎厩舎が3回、藤沢和厩舎、音無厩舎、角居厩舎が2回ずつ。
2頭出しとなると、担当馬の違う厩務員や助手同士がギクシャクして、厩舎内での人間関係が悪くなるのでは、と勘繰ってしまいそうだが、いまは多くの厩舎が「チーム」として機能している。GⅠに2頭出しするような厩舎は当該週の他のレースにも多くの出走馬が控えており、それぞれが勝利を目指しているので厩舎内の競争意識がマイナスに働くことはないのだろう。かつてGⅠ複数頭出しについてある調教師に聞いたところ「大変なのは取材への対応」というなんとも切実な答えが返ってきた。
複数頭出しで宝塚記念を勝ったケースは平成以降で5回(カッコ内は別の出走馬の成績)。二ノ宮厩舎以外は、いずれも「複数頭出しの常連」である。
1998年 橋田厩舎 サイレンススズカ(ゴーイングスズカ4着)
2010年 二ノ宮厩舎 ナカヤマフェスタ(アクシオン15着)
2012年 池江厩舎 オルフェーヴル(マウントシャスタ5着、トゥザグローリー12着)
2015年 池江厩舎 ラブリーデイ(トーセンスターダム12着、オーシャンブルー14着)
2018年 音無厩舎 ミッキーロケット(ダンビュライト5着)
今年も複数頭出しの経験がある角居厩舎が3頭、音無厩舎が2頭出走。とくに角居厩舎は、藤沢和厩舎に次ぐJRAGⅠ26勝だが、宝塚記念は数少ない未勝利GⅠ。これまでのべ13頭が出走しながら2着が3回。昨年もキセキが1番人気に推されながら、道中ではリスグラシューにマークされ、最後は突き放される悔しい結果だった。来年2月いっぱいでの引退を表明しているため、今年が最後のチャンスになる。