墓地の敷地は、お寺の財産ですから、寺院経営上の必要があり、宗教法人の規則に沿って墓参道整備を決定した場合には檀家である以上、お寺の適法な方針に従う前提で墓地を使用しているので、墓参道の改修工事を妨害できませんが、お寺も一方的に檀家に資金拠出を義務付けることはできません。お寺ができるのは寄付の要請にとどまり、支払わないことを理由に、例えば墓地利用の拒否や、その返還請求は認められません。
ただ、境内工事などお寺の護持に必要な費用は、檀徒会などで檀家各自が応分の負担をするよう決定され、これに従って寄付を集めることが多いようです。檀徒会はお寺の護持が目的の団体ですから、その目的の範囲内であって、内容や決定方法が不公平や不合理ではない決定は会員を拘束します。よって檀徒会にとどまる以上、支払いは事実上強制されます。
嫌なら辞めるしかありませんが、檀家仲間の付き合いも難しくなり、檀徒会がお寺の護持を取り仕切っている場合には、檀家の義務を果たせなくなり、お寺との関係が難しくなる可能性もあります。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2020年7月3日号