「たかだか大学受験ではありますが、18歳の私にとっては大きな出来事でした。この経験がコアになり、その後の人生においてさまざまな決断を下す際の信念ができたような気がします。それは2つの言葉に表せます」
【1】世間一般が認める「ベスト」より自分なりの「アナザーベスト」「マイベスト」を選択する。
【2】大事なことほどひょんなことからぽろっと結論が出るもので、そしてそれは決して悪くない。
◆世間の常識から解き放たれるチャンス
白柳さんは京大経済学部を卒業後、I商事に就職する。
「当時の経済学部生にとっていちばん良い就職先は銀行だと言われていました。しかしそれが嫌で商社を希望しました。商社の中でも財閥系は避けました。配属面接では非営業職を希望して驚かれました。特定分野の仕事しかできないのは嫌だったし、得意先におべっかを使うのも性にあわないとわかっていたので。それで財務に配属されました」
自分の大学受験がたまたま「東大入試中止」に当たったという運命から、「世間一般的なベストを歩むな」という啓示的なメッセージを読み取り、その後の人生においても、世俗的な損得勘定にとらわれない選択ができたというのだ。
「もう一つの信念のほうは、言い換えれば、熟慮して出した結論が正解をもたらすなんてことは、小さな決断にしか通用しない考え方だということです。人生における本当に大きな決断は、いくら考えたって結論の出せないことが多いし、そもそも判断する材料がそろっていないことのほうが多いんです。だから、自分の意思とは関係のないところで結論が決まってしまうこともある。でもそうやって出た結論を素直に受け入れると、結果、ものごとがうまくいくことは実は多い」