5月20日、日赤幹部からご進講を受けられる両陛下(写真/宮内庁提供)

◆「横並びのご進講」という布石があった

 振り返ると平成の時代、美智子さまはいつも上皇陛下に寄り添われてきた。常に一歩下がり、「夫を後ろから支える妻」であられた。しかし、女性の社会進出が当たり前の時代になり、令和の皇后陛下は「夫の隣に並ぶ妻」を体現されている。

「コロナ禍にビデオメッセージを出されるのなら、平成よりも一歩進んで、陛下の隣に雅子さまも並んで登場されるのがいいのではないかという声が、宮内庁関係者の間で少なからずありました。それが新しい令和皇室のスタイルでもある。ただ、皇室の長い歴史で初めてのことであり、そのハードルは低くありません」(前出・宮内庁関係者)

 日赤のご進講の際、陛下だけでなく雅子さまのお言葉も公開されたのは前代未聞のことだった。放送作家のつげのり子さんは次のように語る。

「いまの時代は、女性が夫の後ろを歩くのでなく、肩を並べて歩くのが当たり前と言っていい時代です。皇后という存在は、時代に合った女性の理想像を示すものでもあるのではないでしょうか」

 時代に合ったやり方で国民に語りかける方法として「ふたりで並んでメッセージを出す」ことも両陛下の念頭にあったのではないか。

◆試される宮内庁のプロデュース能力

 両陛下のメッセージの実現の壁になっているのは、天皇が肉声でメッセージを出すことの「重大性」だ。

「過去に社会事象について国民一般に肉声メッセージが出されたのは、昭和天皇の玉音放送や上皇陛下の東日本大震災時のものなどごくわずか。いまも大変な状況ですが、果たしてそれらに匹敵するものなのか、判断が非常に難しい。死傷者が5万人を超えた阪神・淡路大震災でもビデオメッセージは出されていません」(皇室ジャーナリスト)

 しかし、肉声のメッセージに「政治性」を帯びる可能性があるがゆえに慎重にならざるを得ないとのこともある。加えて、宮内庁の「プロデュース能力」の欠如も指摘される。

「宮内庁は前例踏襲にこだわり、新しい試みには消極的です。いまでも、上皇上皇后両陛下がされてきたやり方だけを最良とする職員も多い」(別の皇室ジャーナリスト)

 宮内庁は4月のご進講での陛下のお言葉を2週間以上経ってから公開した。新型コロナは震災などと違いピークの見極めが難しく、公開のタイミングが読めないのもわかるが、そこには公開することへの躊躇も垣間見える。

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