病気を治すために行くのが病院。しかし、治療を受けた結果、寿命が縮んでしまうこともありうるという。
東京都立大学名誉教授で長年にわたって健康に関する大規模調査を行ってきた医師の星旦二さんは「そもそも病院は危険なところ」と警鐘を鳴らす。
「しかし、国民皆保険制度があって気軽に受診しやすい日本人には、その認識が足りない。EU事務局の調査では、病院の医療事故で亡くなった人は年間約14万人にのぼり、EU市民の53%が病院を危険な場所だと認識している。その一方、日本人の9割以上が『病院は安全』と思っているのです」(星さん・以下同)
その証拠に、星さんが行った調査によると、全国で寝たきりの人が少ないのは、1人あたりの病床数が少ない、つまり病院数が少ない県が多く、特に長野県や山梨県が顕著だというのだ。
「これらの地域は水や空気がきれいで自然豊かな場所であり、住みやすいという前提はあると思いますが、多少の体調不良では病院に行かず、自分の健康は自分たちで守ろうとする意識が高いことも寝たきりの人が少ない大きな理由の1つだと考えられます。病院から遠ざかることで『ピンピンコロリ』を実現できているのです」
星さんによれば、肝臓がんの県別死亡率も「病院いらず」を裏づける重要なデータだという。
「肝臓がんの大きな原因は大量飲酒だといわれていますが、男性の肝臓がんによる死亡率を見ると、新潟、岩手、秋田などの“酒飲み県”や泡盛を好む沖縄の数値はそれほど高くない。この中でも死亡率がもっとも低い沖縄は、福岡や大阪の3分の1程度です。
実は、肝臓がんの原因の多くは飲酒ではなく、予防接種などの際にC型肝炎ウイルスのついた注射器を使い回していたことをはじめとする、医療事故によるものなのです」
つまり、よかれと思って受けていた医療行為がもととなり、がんを発症してしまった人が多くいるということだ。
「福岡や大阪、広島など明治維新以降に医学部が作られた地域で肝臓がん死亡率が高くなっている一方、最後まで医学部が作られず医師不足が叫ばれていた沖縄で死亡率が低いのがその証拠でしょう」