ウクレレは人に寄り添うセラピー性の高い楽器
落合さんが音楽セラピーにウクレレを選んだのは、数ある楽器の中でも飛び抜けて、“簡単”だから。
「6弦あるギターに対して、ウクレレは4弦。小さくて軽いので、高齢の人でも楽に構えられます。もともと歌の伴奏がメインの楽器。3つの基本コードを覚えれば、上から下へ弾き下ろすストローク奏法だけでだいたいの歌の伴奏ができてしまいます」
ポロンと弾き下ろすだけでも独特の温かな音。たとえばピアノのようなクールな音に対し、ウクレレの温かな音は自然と心がほぐれる。
この音は小さな形と木材によるものといわれ、よく使われるのはハワイアンコア。ハワイでしか生育しない木のせいか、不思議と南国ムードが漂う音。コードを覚える以前にウキウキ楽しい気分にさせるのも、ウクレレの魅力だ。
「高齢者向けの教室では『ふるさと』などの童謡や、『瀬戸の花嫁』など若い頃に流行った懐かしい歌謡曲などを中心に行います。認知症でもの忘れが多くなった人も、昔なじんだ歌は覚えていてどんどん歌えて回想法にもなります。自分のウクレレで伴奏するとなれば、さらに効果的。
参加者のほとんどがまったくの初心者ですが、だいたいその日のうちに1曲伴奏して歌えるようになります。感激して泣かれるかたもおられますが、単に楽器が弾けた達成感だけでなく、孤独が癒され、心が通い合った喜びの手応えも感じます」
シンプルなテクニックや動きだけで簡単に弾き語りの形が整い、多少音が外れても気にせず楽しめるという。正確に音を鳴らすことより、演奏する達成感、みんなで歌と伴奏を合わせる心のコミュニケーションが大切なのだ。
「太鼓や、ギター・ウクレレなどの弦楽器の源流は太古の昔、人が集まるときにリズムやメロディーを刻むための道具だったといわれます。もともと人に寄り添う楽器。セラピーやケアのためというより、まさに原点に戻っているわけです」
楽器演奏は特に男性高齢者も夢中になるという。お父さんの新たな趣味としてもおすすめだ。日本音楽医療福祉協会では個人、グループ、オンラインなどでのウクレレ・レッスンも受け付けている。
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