売上が前年同月比で50%以上減少している中小企業は最大200万円、フリーランスを含む個人事業者は最大100万円が給付される「持続化給付金」は、迅速に給付するため他の制度に比べて手続きの手間が少ない。それを悪用し、給付金を振り込ませる人たちがあとをたたない。申請手順の指南役の指示に従うだけで振り込まれた金の一部が臨時収入になるという甘い言葉に誘われ、結果として詐欺の片棒を担いでしまう人も相次いでいる。その「持続化給付金」の悪用が、以前、全国の整骨院や接骨院で続発した詐取事件と同じ構造を持っていることが見えてきた。ライターの森鷹久氏がレポートする。
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コロナ禍により、事業継続に支障をきたした中小企業や個人事業者への支援として国が設けた「持続化給付金」制度を悪用し、現金を詐取する事案が続いている。個人事業者を装った埼玉県内の大学生が、虚偽の内容の確定申告書や収支内訳書を作成して申請、自分の口座に給付金100万円を振り込ませたとして7月に逮捕されたのが一例目だった。その後、この事件を知った人々から、中小企業庁などに「自分も不正受給をした、返金したい」などの連絡が相次いでいるという。
「警察当局は、事件発覚当初から組織的な犯罪の可能性を示唆しており、ネット上にある『指南サイト』の存在も把握しています。特殊詐欺事件などに関わっている人物の関与もあるとみて、捜査を進めているようです」(大手紙警察担当記者)
実際、8月12日に逮捕された神戸市の会社役員や飲食店経営など男3人による持続化給付金の詐取事件では、申請が100件以上にのぼっていた。余罪ではさらに100件は申請していたとみられている。この男たちの前歴は明らかになっていないが、組織的に詐取を行う何らかのノウハウを持ち合わせていたのは間違いないだろう。
ネット上に複数存在した持続化給付金を得るための「指南サイト」(現在はほとんど閉鎖済)には、もちろん持続化給付金を「不正受給できる」などとは書かれておらず、あくまでも「現金を得る裏技」のようなニュアンスで紹介されていた。違法なことをすすめているのではなく、あくまでも独特のコツを伝えているのであり、もしもっと詳しく知りたければ当方に連絡をくださいというものだ。そこで依頼すると申請について詳しい説明をする代わりに、手数料を渡す手はずが待っている。この手法、2015年頃から全国各地で発生していた整骨院や接骨院による保険の不正請求とよく似た図式である。
「整骨院で、保険で治療を受けたように装えば小遣いが手に入る、という触れ込みで、全国で少なくとも数百人がこの犯罪に加担、中には現役のお笑い芸人などもいたと報じられました。結局背後には暴力団関係者などの反社会勢力が存在しており、逮捕者も出ました」(大手紙警察担当記者)