生活様式が変われども、人とのコミュニケーションは避けては通れない。しかし、話題を投げても会話のキャッチボールが上手くいかず、ついにはお互い沈黙……会話が苦手な人、いわゆる「コミュ障」と呼ばれる人が少しでも会話を盛り上げる方法はないのか──「元コミュ障」を自称するニッポン放送アナウンサー・吉田尚記氏と、作家とのコミュニケーションに悩む敏腕漫画編集者の佐渡島庸平氏(株式会社コルク代表取締役社長)が、会話術について語り合った。
* * *
吉田:そもそも編集者は作家とのやりとりを経て作品を作り上げますよね、コミュニケーションが苦手だと大変ですよね。
佐渡島:これまで、自分はコミュニケーションが上手いっていう自己認識があったんですよ。でも、僕のコミュニケーションって、どんどんその人を深掘りしていって、その人がこれまで考えていなかったことを引き出すってことに特化していて。たしかにそのやり方は、すでに第一線で活躍されている方を相手にするにはとても有効なんです。ベテランの作家さんにはそんなにズケズケ聞く人もいないから、新鮮に感じてもらえる。
ただ、新人の方には萎縮されちゃうときがあるんですよ。このSNS時代の、新しい才能を持つ人たちを伸ばしていこうとしたときに、今の僕の話し方と聞き方ではだめかもしれないと思って。
吉田:他人とのコミュニケーション方法について、これまでたくさん相談受けてきましたけど、それは初めて聞くニーズですよ(笑)。佐渡島さんの今までの実績を考えれば、むしろ佐渡島さんの深堀りに応えられる人たちこそ、才能ある人ってことじゃないですか。編集者としては、そのままでもいいんじゃないかって思うんですけども。
佐渡島:今まではそういう攻めた質問にも負けずに答えられる強い人が「才能ある人」だと思っていたんですよね。「才能というのは個性で多様だ」っていいながらも、人に勝つような“強さ”が必須だと。マスメディアという枠の中で、限られた数の席を勝ち取るためには、そういう強さはどうしても必要でした。
でも、SNS空間やVR空間というものが登場して、マスメディアという場では席を勝ち取れなかったような人でも、才能を発揮できるようになった。ようやく才能にも多様性があるって思えるようになったんです。
編集者もこれからは、吉田さんの言うところの「コミュ障」だけど才能がある、って人とも向き合う機会が凄く増えてくると思うんです。僕はそういう人たちと、より上手くしゃべり、その人たちがより才能が認められるようなかたちに引き上げていく必要がある。そのときに僕の相手にたたみかけるような話し方、聞き方っていうのは、違うだろうと思ったんです。
吉田:佐渡島さんはまず、もっと驚いたほうがいいと思います。
佐渡島:驚く?