スポーツ

安倍辞任で「2021東京五輪」どうすべきか 郷原信郎氏の意見

2021年の開催の現実味は…(時事通信フォト)

2021年の開催の現実味は…(時事通信フォト)

 新型コロナウイルス収束の見通しが立たないなか、来年7月開催の是非が議論を呼ぶ東京五輪。安倍晋三首相の辞任は開催の行方にどう影響するのか。日本、そして世界にとって最良の選択とは何なのか、元検事で弁護士の郷原信郎氏(65)の意見は──。

 * * *
 安倍首相が辞任を表明したことで、来年7月の五輪の開催可否について次期政権が大きな役割を担うことになります。開催判断の最終権限はIOCにあるとはいえ、誰が首相になっても常識的な判断を求めたいと思います。

 そもそも世論は、来年7月開催は難しいとの方向に傾いていました。例えば今年7月のNHKの世論調査では、「中止すべき」「さらに延期すべき」が66%でした。新型コロナの感染状況や、開催に向けた追加コストなどを鑑みた結果だと考えられます。

 そんな逆風においても安倍首相が来年7月開催にこだわったのは、政権のレガシー(花道)だと考えていたからでしょう。内閣支持率が低下し、世論が五輪中止に傾くなかでも、来年の開催への望みをつなごうとしていた様子が見てとれます。

 7月23日の「開催1年前記念イベント」も、その動きのひとつでしょう。白血病からの復帰を目指す競泳の池江璃花子選手(20)が、「今から1年後、オリンピックやパラリンピックができる世界になっていたら、どんなに素敵だろうと思います」とメッセージを発した。この記念イベントに池江選手が起用された経緯について、毎日新聞「東京開催の危機『池江一択』 組織委、世論の打開狙う オリンピック1年前メッセージ」(7月23日オンライン版)にはこう書かれています。

〈大会関係者によると人選は「池江一択」だったという。池江が白血病を公表した昨年2月、池江の呼び掛けに応じて日本骨髄バンクのドナー登録が急増した。社会的な影響力の高さに加え、組織委内には闘病生活を乗り越えプールに戻ってきた池江の起用で、新型コロナウイルスで様変わりした環境に苦悩する世界中の仲間へ勇気を届ける思いも込めた〉

 しかし、病から復帰しようとする池江選手の姿勢を、来年7月開催に結び付けることに違和感を覚えた人は多かったと思います。イベントの後、ツイッターで「池江璃花子」と検索すると、「違和感」「政治利用」などの言葉を並べたツイートが見られました。来年7月開催を維持したいという安倍政権や組織委員会の政治的な意図が透けて見えたからではないでしょうか。

 7年8か月にわたった長期政権のなかで、政府・与党内からは、常識的にありえないこと、不当なことでも「おかしい」と声をあげる動きが出なくなっていた。これは「桜を見る会」問題の構図とも共通します。公金が投じられる会が、安倍首相の“接待行事”と化していたことを問題視する内閣府や官邸の職員がいたといても、彼らは異を唱えることはできなかったわけです。

 五輪開催の是非を論じる際には、来年7月開催のためには多額の追加費用が必要になることも念頭に置くべきです。IOCは800億円程度しか負担しない方針を示しており、日本側の追加拠出は3000億円程度が必要といわれています。しかし、東京都は新型コロナ対策で財政調整金の多くを使い果たしてしまい、追加費用を負担できる状況にありません。必然として、スポンサー企業に頼らざるを得なくなる。

関連記事

トピックス

屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
人が多く行き交うターミナル駅とその周辺は「ぶつかり男」が出現する(写真提供/イメージマート)
《生態に意外な変化》混雑した駅などに出没する「ぶつかり男」が減少? インバウンドの女性客にぶつかるも逆に詰め寄られ、あわあわしながら去っていく目撃談も
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
大の里、大谷
来場所綱取りの大関・大の里は「角界の大谷翔平」か やくみつる氏が説く「共通点は慎重で卒がないインタビュー。面白くないが、それでいい」
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
CM界でも特大ホームラン連発の大谷翔平
【CM界でも圧倒的な存在感の大谷翔平】「愛妻家」のイメージで安定感もアップ、家庭用品やベビー用品のCM出演にも期待
女性セブン
堀田陸容疑者(写真提供/うさぎ写真家uta)
《ウサギの島・虐殺公判》口に約7cmのハサミを挿入、「ポキ」と骨が折れる音も…25歳・虐待男のスマホに残っていた「残忍すぎる動画の中身」
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン