巨人独走のセ・リーグに対して、パ・リーグは熾烈な優勝争いが繰り広げられている。3年連続日本一の王者・ソフトバンクを苦しめるのは「46年間リーグ優勝なし」のロッテ。12球団トップの金満球団を追い詰める、12球団ワーストの貧乏球団。「お金がなくても勝てるんです」──その秘密を探った。
逆転のマリーンズ
終盤を迎えたペナントレースで、ソフトバンク(SB)とゲーム差なしにつけるロッテ(成績は9月30日終了時点)。今季のパは上位2チームでCSが行なわれるが、「今季のロッテはホームゲームで無類の強さを見せ、12球団で唯一4連敗がない。3位の楽天とのゲーム差は5.5ゲーム。大崩れは考えにくく、SBとともにCS進出の可能性は高い」(スポーツ紙デスク)と見られている。
ただ、ロッテとSBには明らかな“差”がある。SBのチーム防御率(3.26)、失点(317)はいずれもパでダントツ。ロッテは防御率(4.13)はリーグ4位で、失点(392)が得点(368)を上回る。チーム打率(2割4分3厘)は何と12球団ワーストタイだ。
昨年のWBSCには誰も選出されず、巨人の7選手に次ぐ6選手を送り込んだスター選手揃いのSBとは年俸の面での差も大きい。選手の年俸総額はSBの半分以下で、選手の平均年俸は12球団最下位の3035万円。日本人の“億プレイヤー”も最少タイで守護神・益田直也(2億円、金額は推定。以下同)とエース・石川歩(1億500万円)、元首位打者(2016年)の角中勝也(1億円)の3人だけ。対するSBには11人もいる。
興味深いのは、その12球団イチの貧乏球団が12球団イチの金満球団を“カモ”にしていることだ。今季の対戦成績はここまでロッテの10勝4敗1分だ。
「昨年もロッテはSBに17勝8敗と勝ち越した。二木康太が昨年からSB戦6連勝中など、ロッテにとってSBは“お得意様”になっている」(同前)
1988年のドラフト1位でロッテに入団した前田幸長氏も古巣の変化に目を見張る。
「SB戦になるとやたら粘り強いという印象は以前からありましたが、今季のロッテは2、3点のビハインドなら簡単に追いつける雰囲気がある(逆転勝利数24はリーグ1位)。私が現役の頃のロッテは、優勝争いから脱落すると、選手が個人成績に走りがちなチームでした。でも今季は個々がチームのために貢献するムードがある。SBも簡単には優勝させてくれないでしょうが、大いに期待できます」