澤村にぴったりのチーム
SBとの選手層、資金力の差を埋めた原動力には、ロッテ首脳陣の戦略もあるようだ。SBで投手コーチの経験もある杉本正氏が語る。
「ロッテ首脳陣にはSB出身者が多い。井口資仁監督はじめ鳥越裕介ヘッドコーチ、吉井理人投手コーチ、清水将海バッテリーコーチ、的場直樹戦略コーチ、河野亮打撃コーチなど、SBを知り尽くしている。SBの一軍捕手だった細川亨や福田秀平を獲得し、SBに強い美馬学を楽天から獲得した。打倒SBの戦略を練ってきた結果だと思います」
とりわけ力を入れたのがリリーフ陣の整備。セーブ数トップを走る益田を筆頭に12球団屈指の駒が揃っている。
「今のロッテは7~9回を安心して見ていられる。後半に点を取られないことで、接戦をものにできる(1点差試合は18勝7敗)。今季は過密日程で投手への負担は大きいが、吉井コーチがリリーフを3連投以上させないようにブルペンを回しているのが大きい」(同前)
その盤石のリリーフ陣に加わったのが9月に巨人から移籍した澤村拓一だ。
「巨人では事実上の戦力外。ストレートで球速を出すことばかりにこだわり、四球を出して自滅する。ここ数年、そんな投球を繰り返していたため、首脳陣に愛想をつかされ、三軍にまで落とされた」(巨人番記者)
ところが移籍後は別人のような大活躍。9試合に登板して自責点1、防御率は1.04で勝利の方程式の核を担っている。この復活劇を前田氏はこう分析する。
「真っすぐの制球は相変わらず悪いが、140キロ台のスプリットがストライクゾーンに入っている間は結果を残すでしょう。シーズン中のトレードでパの球団にデータが少ないことも追い風になっているかもしれない」
阪神からロッテに移籍した経験のある遠山昭治氏は、澤村の投球スタイルがパの打者に効果的だったことに加え、チーム環境もよかったとみる。
「突出した選手がいないため、仲間意識が強くまとまりやすい。厳しい上下関係もなく、同じ中央大OBで2年先輩だった美馬や1年後輩の井上晴哉もいて、馴染みやすかったはず。球団もファンも選手を大切にするので負けても辛辣なヤジが飛んでくることがない。意気に感じて投げるタイプの澤村には合っている」