博物館や美術館で研究、収集、展示、管理などを行う専門職、学芸員。最近はキュレーターと呼ばれることが増えているが、専門知識を生かした彼らの展示によって、作品の新たな側面を発見させられることがある。評論家の呉智英氏が、キュレーションの力によって展覧会の成否が決まり、その力で洋画家・関根正二の傑作の新たな魅力に気づかされた体験について綴る。
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芸術の秋でもあるので美術展の話をしてみよう。私は学生時代から美術館によく行くが、近年はマンガ系のミュージアムの顧問などを務めているため、展示する側の視点で美術を考えるようになった。
美術館にはキュレーターという職種の人たちがいる。学芸員とも言う。展示企画や作品解説を担当する館員で、その仕事がキュレーションである。キュレーション次第で展覧会の成否は決まる。
公的な美術館ではないが、画廊の展示会にも同じことが言える。一昨年末の十二月六日号「週刊新潮」に、銀座の画廊ジャンセンギャラリーのコレクション展の大きなカラー広告が掲載された。ルノワールの二作品のうち一つは『テーバイのオイディプス王』で、これが目玉作品らしい。解説文は次の通りだ。
「古代ギリシャ三代悲劇のひとつ、ソポクラテスが紀元前に書いた『オイディプス王』の劇的クライマックスシーンを54歳のルノワールが美しい色彩で詩情豊かに謳い上げている」
うーん、三大悲劇詩人に「ソポクラテス」なんていたかな。ソポクレスとソクラテスの両方の血筋を引く詩人なのかも知れんが。新潮社の校正者がこれを見逃すとは思えないので、広告を制作した代理店のミスだろう。私自身展示品のキャプションを読み違えたこともある。