学術会議問題の影響もあり、支持率を低下させている菅内閣。その菅義偉・首相の周りを固めるのは、警察官僚出身の杉田和博・官房副長官(事務担当)や北村滋国家安全保障局長といった“官邸官僚”だ。その序列は杉田氏が1位、北村氏が2位と見られている。
そして、その序列を飛び越える官邸官僚が現れた。和泉洋人・首相補佐官だ。菅首相は10月18日から就任後初の外遊でベトナム、インドネシアを歴訪したが、首脳会談の陪席者の席次が外務官僚や同行記者を驚かせた。
首相の右隣に側近議員の坂井学・官房副長官、通訳を挟んで左隣には和泉補佐官、北村国家安全保障局長の順番で座ったからだ。
「国家安全保障局長のほうが首相補佐官より役職の序列は1ランク上だ。和泉補佐官は外交担当でもないのに坂井副長官と並ぶ準閣僚級の扱いで北村氏と席次が逆転し、側近官僚ナンバーワンということを見せつけた」(外交に強い政界関係者)
和泉氏は官邸官僚としては異例な経歴を持つ。東大工学部都市工学科から旧建設省に技官として入省、国土交通省住宅局長などを歴任して退官後、民主党政権で野田内閣の内閣官房参与となった。政権交代で第2次安倍政権が発足すると民主党政権に仕えた官僚が次々に排除されるなかで、和泉氏は首相補佐官に抜擢された。
とくに菅氏が力を入れたインフラ輸出や沖縄の基地移設問題では官房長官の“代理人”として動き、強引な手法で批判を買った。沖縄の米軍ヘリパッド建設が地元の反対運動で難航すると、和泉氏は隣接地に発電所を持つ電源開発に「本件は官邸で官房長官直結で私が仕切っており、一省庁の問題ではなく、国の問題」と施設を使わせるように要請、「海外案件は何でも協力しますから」と“便宜供与”をほのめかしていたことが電源開発側の文書で明らかになった(沖縄タイムズ報道)。