他人の犯罪収益を強奪しようとする人は、案外、少なくない。たとえば、非合法活動によって金を得る者たちのグループで「身内を撃つ」、仲間の金を強引に奪うといった揉め事はよく起きている。ただし、撃つ行為、強盗の実行犯を、SNSなどで募った素人にやらせるというパターンは、かつては見られなかった。
それというのも、犯罪収益を標的に強盗を仕掛けるというのは、警察に逮捕されるかもしれないという話とはまた別の危険にさらされるからだ。非合法手段で得られた金を奪われた側は、それを取り返そうと躍起になるとき、当然、普通ではない手段で強引に奪い返し、報復に出てくる可能性が高い。その局面では暴力団など、ある意味では「プロの現場」に巻き込まれることも想定される。それほど危険な「仕事」なのだから、たとえ卑怯な手段でも信頼できるメンバーで挑むのが普通だったのに、目黒のタワマン強盗事件をみると、実に安易にアウトソーシングしていることがわかる。捜査関係者が言う。
「そこに金さえあれば、相手がだれであろうと、どんな手段を使ってでも奪ってやろうという連中が、反社の世界ではご法度な”身内をたたく”行為に出始めた。自分でやるのならまだしも、思慮の浅い素人を使うあたり、本当に姑息で虫唾が走るほど卑怯。想像もできないような悲劇が起きる日は近いのではないか」(捜査関係者)
犯罪収益を別の犯罪グループが強奪することまでSNSを経由した安価で安易な外注に頼るのが当たり前になったら、どんな未来がやってくるのか。ただ金に困っただけの少年が、興味本位からSNSを通じ、いつの間にか暴力団抗争における「ヒットマン」に転じる、といったこともあり得るのかもしれない。