コロナ禍で失業や休業、雇い止めなどが増加し、多くの現役世代の生活が苦境に陥っている。その一方で、景気に大きく左右されず安定した収入がある年金世代の高齢者は恵まれていると見られることが少なくない。しかし、完全リタイア後の世代にも、“コロナ不況”の影は確実に忍び寄っている。本来なら独立しているはずの中高年になった子供が、親の年金を頼ってくるというケースが増えているというのだ。
11月9日、大阪府警東淀川署は「自宅に母親の遺体を放置した」として無職の65歳男性を逮捕(死体遺棄容疑)した。
「容疑者の男性は、『母親の年金が止められたら自分が暮らしていけなくなると思った』といった主旨の供述をしている。コロナ禍で仕事がなくて収入を絶たれ、2か月ごとに振り込まれる年金が“家計の柱”になっている世帯は少なくない。それを失うわけにはいかないと考えて、87歳の母親が亡くなったあとも1か月程度、遺体を放置していたとみられています」(捜査関係者)
親の年金目当てに死後も遺体を放置する事件は過去に何度も起きている。2010年には、東京・足立区で戸籍上は存在している「111歳男性」の白骨化した遺体が発見された。男性は発見の30年以上前に亡くなっていたが、同居していた家族が死亡を隠して年金を不正に受給し続けたという衝撃的な事件だった。当時、同様の事例が他にも確認されたことから、「高齢者所在不明問題」がワイドショーなどでも話題をさらった。コロナ不況で現役世代の失業や困窮が深刻になっていることから、再びそうした例が増えているのではないかと懸念されている。