混乱する米国を尻目に、経済規模で世界一になろうとする中国と、日本はどのように向きあってゆくべきか。経営コンサルタントの大前研一氏が、今後、日本が目指すべき道について考察する。
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前号(『週刊ポスト』2020年11月20日号)では、今から数年後の2020年代後半にも経済規模で世界ナンバーワンの「最強国家」になろうとしている中国の共産党独裁政権の力の源泉を解説した。
実は、中国の動きを見ていると、かつての日本の“失敗”を綿密に研究し、他山の石としているフシがある。
たとえば、日本は1991年の「日米半導体協定」改訂で、日本市場における外国製半導体のシェアを20%以上に引き上げなければならなくなった。このため日本はアメリカから輸入しようとしたが、アメリカには民生用の半導体がほとんどなかった。
そこで日本は「外国製」であればアメリカ製でなくてもかまわないということで、韓国から輸入して「20%以上」の条件をクリアしようとした。その際、日本企業がサムスン電子やLGエレクトロニクスにノウハウを開示して製造技術を伝授したので、結果的に日本企業は韓国企業に寝首をかかれる羽目になった。
一方、中国はしたたかだ。トランプ政権が世界的に人気の動画共有アプリ「TikTok」について、利用者の個人情報が中国政府に悪用されるおそれがあるとしてアメリカ事業の売却を命じ、中国の運営企業バイトダンスとアメリカのソフトウエア大手オラクルおよび小売り大手ウォルマートが提携することになった。
しかし、中国政府が8月下旬にアルゴリズム技術の輸出を禁止したため、AI(人工知能)がユーザーの好みを学び、先回りして表示するTikTokの基幹技術は開示されない。つまり、アメリカ企業はノウハウを得られないまま資本だけを注入することになる、ということで交渉は頓挫している。