そういう米中覇権争いの狭間で日本はどうすべきか? もちろん安全保障上は日米同盟を継続し、外交もアメリカに追従せざるを得ない。それでも、中国という「世界の工場」と「巨大市場」が隣にあることは極めて重要だ。
日本のGDPは、過去2000年間のうち最近100年間を除くと、おおむね中国の10%だった。それを前提として、人口が10倍以上、国土面積が25倍以上もある中国とGDP(規模)では競わず、1人あたりGDPが高いスイスやデンマークのような「クオリティ国家」を目指すしかないだろう。また、日本企業は米中が覇権争いにしのぎを削っているほうが漁夫の利を得ることができるので、イデオロギーよりも実利を重視し、売上高ではなく利益率が高い「クオリティ企業」を志向すべきである。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。
※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号