中国以上に衛生管理がずさんな国がある
いったいどんな輸入食品が危ないのか。食品問題評論家の垣田達哉さんが説明する。
「いまは世界中、どの食品加工工場でも手袋やマスクの着用は大前提です。しかし、牛、豚、鶏などの食肉は加熱調理が前提なので、現場の衛生観念も緩みがち。なかでも細かい骨のある鶏肉は、手作業の工程が多い。もちろん殻を剥いたり、骨をとらなければならない魚介類も一緒です。もし従業員が新型コロナに感染していて、マスクをしないで話したり、咳やくしゃみをすれば飛沫から食品にウイルスが付着する可能性はとても高いといえます」
2008年に発覚した「毒入り餃子事件」などの影響もあり、これまで“危険な食品”といえば中国からの輸入品のイメージが強かった。だが、現状は大きく変わりつつある。
「中国では国内でも“毒食品”が話題になったため、ここ数年、国を挙げて食品衛生の向上に取り組んできており、以前に比べて状況がかなりマシになってきている。一方、“脱中国”の流れでブラジルやアルゼンチンなどからの食品輸入が増えており、それらの国では中国以上に衛生管理がずさんな食品加工現場も多いんです」(垣田さん)
特に日本は、先に感染リスクが高い食品として挙げられた生の輸入鶏肉の約7割をブラジルに頼っている。
「その理由は価格の安さです。ブラジルでは日本などへの輸出向けに鶏肉加工業者の間で過当競争が起きているため、安かろう悪かろうになりやすい」(垣田さん)
そうして新型コロナが付着した輸入食品が、空路や海路で日本国内の市場に運び込まれる可能性がある。
「しかし、危ないのは市場関係者だけではありません。中国では海外から持ち込まれた冷凍食品のパッケージから検出されたとの報道があります。そうなると、流通にかかわる人や、入荷しているスーパー、それを購入する買い物客など、全員に感染リスクがある。例えば、アルゼンチン赤えびのように、解凍後に加熱せず、生食するものが汚染されていた場合は消費者にもリスクがあります」(垣田さん)
消費者は、店頭でウイルスが付着した製品に触っても、帰宅時にきちんと手を洗えばウイルスを洗い流すことができる。だが、家に持ち帰った製品を再び触れば、そこで新たにウイルスに接することになる。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが言う。