業界によっては売り上げが9割減というコロナ苦境にあえぐなか、有名企業が経営トップ交代に踏み切っている。逆境打開の重責を任されたと考えるか、それとも貧乏くじか――。
窮地だからこその反転攻勢としてトップ交代に打って出た企業もある。9年ぶりに第1四半期(2020年4~6月)の純損益が98億円の赤字に転落したパナソニックでは、現在の津賀一宏社長に代わり、常務執行役員で社内カンパニーのオートモーティブ社の社長を務めている楠見雄規氏が来年6月から社長に就任する。社長交代は9年ぶりだ。月刊誌「経済界」編集局長の関慎夫氏が語る。
「パナソニックの社長は3代前まで6年ほどで交代してきたが、津賀氏は9年間も社長の座にいた。会社を成長軌道に乗せて勇退するというプランを描いていたはずですが、逆にこの2年で業績は悪化した。おそらく津賀氏にとっては“無念の交代”でしょう。
後任の楠見氏は、赤字続きだった自動車関連の事業を黒字が見えるところまで伸ばしたことが評価された。“理論派”とされ、思い切ったこともできるタイプ。大胆な改革が期待できます」
家電ではなく自動車関連から社長を出したところに、パナソニックの“脱家電”の意志が表われているようだ。
花王も8年半ぶりの社長交代を決めた。専務執行役員の長谷部佳宏氏が来年1月1日付で社長に昇格し、澤田道隆社長は代表権のない会長になる。
「長谷部氏は、退任する澤田氏を“兄貴”と呼んでいるそうで、この社長交代は規定路線です。コロナの影響で外出が減り、化粧品部門の業績が悪化したので、新年から新社長で巻き返すという狙いなのかもしれません」(同前)
新社長となる長谷部氏は、社長交代の発表会見で「この大転換期に澤田社長からのバトンを受けないわけにはいかない」と心境を語った。