一方、コロナ対策となると、安倍の側近グループの今井尚哉(前首相補佐官、現参与)たちが悉く失敗し、安倍自身が政権運営にやる気をなくしていった。
そこで6月から7月にかけ、菅が自民党幹事長の二階俊博とタッグを組んで政権奪取の画策をしていく。ある官邸官僚が打ち明けてくれた。
「菅さんは6月にGo To キャンペーンを取り仕切るようになって完全に復権しましたが、和泉さんはその少し前からでしょうか。ダイヤモンド・プリンセス号の失態で政策からやや遠ざけられていた和泉さんは、不倫疑惑が報じられた厚労省の大坪寛子さんとともにコロナ対策に復帰しました。アビガン、PCR検査、国内ワクチンの開発という3点セットだけでなく、あらゆる政策に口を出すようになった」
「御前報告」という皮肉
8月に入ると、厚労官僚たちは安倍ではなく、和泉の顔色をうかがい、和泉詣でを繰り返していく。手元に厚労省幹部の官邸へのブリーフィングスケジュールメモがある。それは折しも、潰瘍性大腸炎の再発による安倍首相退陣情報が流れ始めた盆休みの8月15日から首相退陣までの期間だ。
そこにはやたらと和泉洋人の名前が登場する。表向き首相は夏休みに入り〈18日(火)まで総理連絡会議は開かない予定〉となっているが、その間も和泉詣ではひっきりなしだ。補佐官室でのコロナブリーフィングを抜粋すると、17日の〈9時30分~50分 沖縄の医療機関支援〉についてとあり、18日にいたっては1日3度も補佐官室で次のような報告をしている。
〈9時~ワクチン等の研究開発状況、日本版CDC(疾病予防管理センター)への対応、感染研への対応〉〈10時45分~水際タスクフォース〉〈16時30分~50分 総合検討タスクフォース〉
19日の説明内容が〈14時~14時30分 検査TF(検査体制の確保)〉だ。
この19日になって2日間の夏休みを終え首相の安倍が公務に復帰。16時40分からようやく〈総理連絡会議〉と記された首相ブリーフィングが行なわれているが、すでにこの頃は首相がやる気をなくしていた。
「総理連絡会議は総理のほか、補佐官や秘書官などいわゆる官邸官僚が勢ぞろいし、そこで厚労省の医政局長や審議官が報告し、議論する場です。しかしこの頃は、それとはまったく別に和泉さんだけにコロナ状況のレク(報告)をしなければならなかった。我々にとってはそちらのほうがメインでした」
先の厚労省の関係者がさらにこう憤る。
「ちょうど沖縄で感染者が増えている時期だったので、『沖縄の状況について聞かせろ』と和泉さんから指令が来て医系技官を連れ、医政局長と審議官が説明に入る。レクの回数は総理より和泉さんのほうが圧倒的に多くなっていきました。和泉さんから補佐官室に毎日呼び出され、全国の状況をまとめて提出しなければならない。資料作りのために若手や中堅官僚は寝る暇がなく、徹夜続き。もはや限界に近い」