今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のために、前代未聞の無観客開催となる『NHK紅白歌合戦』。ある意味“レア”な今年の紅白をより楽しむために、紅白好きの3人、元NHKのアナウンサーで紅白の司会を務めたこともあるキャスター堀尾正明さん、昭和歌謡ライターで紅白ウオッチャーの田中稲さん、紅白歌合戦研究家で作家・音楽プロデューサーの合田道人さんが集結し語り合った。
──今回の紅白は、瑛人の『香水』に出てくる「ドルチェ&ガッバーナ」という言葉がOKになったと話題になっています。
合田:歌詞や曲名がNHK的にNGなケースもありましたね。代表的なのが中森明菜の『少女A』。デビューの年も有力でしたが、『少女A』という曲名が非行少女のイメージということもあって落選。翌年、初出場した第34回(1983年)は『禁区』を歌いました。
堀尾:松本伊代の『センチメンタルジャーニー』も、「伊代はまだ~」を「私まだ~」に変えたんでしょ?
合田:そうでした。自己宣伝になるから公共放送としてはダメ。ただし、『ひばりの佐渡情話』や『圭子の夢は夜ひらく』のように、歌の中に名前が出てこず、曲名だけならOKでした。
堀尾:山口百恵のヒット曲『プレイバックPart2』に出てくる「真紅なポルシェ」は、「真紅なクルマ」になったんでしたっけ?
合田:実はあれ、第29回(1978年)の紅白ではちゃんと「真紅なポルシェ」と歌っているんです。それまでのNHKの番組では「真紅なクルマ」だったのに、大晦日だけ「真紅なポルシェ」に変わった。それには理由があるんです。
堀尾:なんですか?
合田:実はもう1曲、その年に庄野真代の『飛んでイスタンブール』の歌詞の「こんなジタンの〜」というところの「ジタン」が、たばこの銘柄ということで、それまでは「こんなたばこの〜」と歌っていたんです、NHKでは。
田中:そうでしたね!
合田:はい。ですが紅白では「ジタン」と歌えたんです。この理由には、ピンク・レディーがこの年、紅白を蹴ったことがあるんです!
堀尾:ええっ!
合田:ピンク・レディーが出場を辞退する。一番の人気者がいない。じゃあ、どうしようかっていうことで。NHKで「ポルシェ」と歌いますって発表した。だから、ほかではなく、紅白を見てと……。
堀尾:なるほど。
田中:すごーい!!
合田 タブーな歌詞もOKになることがあるんです。