箱根駅伝のダークホースとして大会を盛り上げた創価大学、そして全国大学ラグビー選手権で明治や早稲田といった名門を撃破して初優勝を果たした天理大学。両校は「宗教団体」を母体とする。なぜ教団はスポーツ教育に力を入れるのか──。『永遠のPL学園』(小学館刊)の著者でノンフィクションライターの柳川悠二氏が裏側に迫った。(文中敬称略)
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創価大学が総合優勝まであと一歩の快走を見せた箱根駅伝から8日後の1月11日、全国大学ラグビー選手権の決勝に臨んだ天理大が、早稲田大を55対28で破り、同校として初めて、関西圏の大学としては1984年の同志社大以来2校目となる日本一に輝いた。
1925年の建学と同時に創部されたラグビー部を率いるのは、天理高校のOBである小松節夫監督(大学は同志社)。昨年8月、天理大ラグビー部では部員62人が新型コロナに感染するクラスターが発生し1か月間にわたって練習が禁止された。苦難の末にたどり着いた初優勝の喜びを小松監督はこう表わした。
「我々だけでは乗り越えられなかった。大学、天理市民の皆さんのおかげで(活動を)再開できた。恩返しができて喜んでもらえることが嬉しい」
宗教団体名が自治体名となっている奈良県天理市では、午後2時になると街中でサイレンが鳴り響き、信者は足を止めて教祖殿の方角を向き、静かに礼拝を始める。午後2時は1887年に教祖・中山みき氏が亡くなった時刻とされる。
建学からスポーツに力を入れてきた天理大では、付属校とともに柔道部、ラグビー部、野球部が「天理スポーツの3兄弟」と呼ばれ親しまれてきた。
体育学部のキャンパス内には柔道部などが練習する立派な武道館があり、大学と高校それぞれが総合運動公園規模の広大な練習施設を持ち、多くの運動部が専用グラウンドで汗を流す。
“長男”の柔道はこれまで五輪3連覇を果たした野村忠宏氏やシドニー銀メダリストの篠原信一氏などを輩出。柔道一家に育ち、実父が天理高校柔道部の監督を務めた野村氏は2015年の現役引退時、教団の次期トップである中山大亮青年会長に引退報告をしたと報じられた。
“三男”の野球では、1986年に天理高校野球部が夏の甲子園決勝で松山商業を下し、初めて深紅の大優勝旗を手にした。この年は教祖の没後100周年となる「教祖百年祭」の年にあたり、スカウティングに力が注がれた代であった。