創立50周年に向けて強化を図った創価大と同様に、宗教団体としての節目の年にスポーツで結果を残すことで、信者に勇気を与え、祝祭を彩りたい思惑があったのだろう。
天理高校に通う生徒は、創価高校とは異なり入信が義務付けられており、練習中に2時のサイレンが鳴ると、たとえバッティング練習中でも中断して「四拍手一礼」の所作で黙祷を捧げる。
一方、大学には入信しなくとも進学可能だ。ある時筆者が、息子を大学から天理に進学させた親族に話を聞くと、「入信の義務はありません。だって、うちは創価学会員ですから」といわれたことがある。
大学選手権の決勝に進出したラグビー部も、スターティングメンバーに天理高校出身者は3人だけだ。
「“2時のサイレン”で練習を止めるかは、各クラブの指導者によるようです。ラグビー部も基本的には礼拝をしますが、さすがにスクラムを組んでいる時には止めない。そこは臨機応変に。天理大生の信者はおよそ6割程度といわれています」(大学選手権決勝に訪れていた天理大ラグビー部OB)
毎年、天理市では1月5日から7日にかけて「お節会」と呼ばれる年始イベントが開催されており、ラグビー部のユニフォームと同じ黒色の法被を着た天理の中高生であふれかえる。ところが今年は中止となり、教祖殿の周りにも人気は少なかった。
天理教に限らず、新宗教の団体の多くは信者の高齢化と共に新規信者が伸び悩む。天理市のこの侘しさは、コロナの影響が大きいとはいえ、新宗教が置かれた現状を如実に表わしていた。
だが“次男”のラグビー部の日本一がこうした沈滞ムードに光を射した。
※週刊ポスト2021年1月29日号