ロケの際はいつもホテルで部屋飲み。ほかの共演者やスタッフは日付が変わる頃に部屋を出たが、渡さんは「ひろしはまだいいだろ」と引き留めた。夜中の3時、4時まで2人で飲むのは当たり前。舘は2時間ほど横になって急いで現場に向かったが、渡さんはゆっくり昼前に顔を出したという。渡さんにとっても心を許せる“舎弟”だったのだろう。
渡さんは寡黙なタイプ。豪放磊落で知られる勝新太郎さんが石原プロを訪ねると、渡さんはいつも舘を呼んで相手をさせたという。舘が勝さんの酒席のエピソードに詳しいのは、そういう事情だった。
「演技について渡さんが舘さんにアドバイスしたのは、一言だけだったそうです。それは、『ひろし、芝居なんかしちゃいけない』。舘さんは、裕次郎さんも渡さんも、自分も含めて石原軍団は“大根役者ぞろい”とよく言います。
その心は、“スクリーンに存在するだけで人を惹きつける存在感”が大切だということ。『西部警察』はビルが爆破され、車がひっくり返るだけなのに、裕次郎さんと渡さんがたばこをくわえトレンチコートを着て歩くだけで魅力的な作品になる。いちばん必要なのは演技のテクニックではない。それを渡さんは舘さんに伝えようとしたのです」(芸能関係者)
※女性セブン2021年2月18・25日号