史上初の無観客開催となった2021年のプロ野球キャンプ。選手は寂しさを感じながらも、口うるさいOBやメディアの直接取材もなく穏やかに過ごしている……わけがない。なかでもそれぞれ正念場を迎えているベテラン選手たちの立ち位置は微妙な様子だ。
阪神から戦力外通告を受けた福留孝介(43)が中日に14年ぶりに復帰した。
「獲得に動いたのはフロントでした。観客動員数減少に悩む球団が中京地区で圧倒的人気を誇る福留に白羽の矢を立てた」(中日担当記者)
しかし、昨季8年ぶりのAクラスに導いた与田剛監督(55)には悩みのタネとなりそう。
「3年契約最終年の与田監督は是が非でも結果を出さなければいけない。だからこそフロントに戦力補強を求めていた。与田監督は福留を代打で起用したい考えだが、スタメンの4打席で結果を出すタイプで代打には向いていない。若返りを図るチーム状況の中、ベテランで一匹狼タイプの福留の扱いは難しい」(同前)
阪神も若手とベテランのバランスが難題となりそうだ。キャンプ初日からフリー打撃で9本の柵越えを放ち、在阪スポーツ紙の一面を連日飾る阪神ドラ1の佐藤輝明(21)には“大先輩”が立ちはだかる。
「矢野燿大監督は佐藤を外野で起用する考えですが、センターは近本光司、レフトは新外国人のロハスが有力で、残りはライトしかない。佐藤は1枠を近大の先輩で球団最年長の糸井嘉男(39)と争うことになる。昨季、糸井はケガに泣かされ放出も囁かれただけに、背水の陣で立ち向かってくる」(在阪テレビ関係者)
糸井はキャンプ2日目には佐藤を上回る12本の柵越えで順調さをアピールした。
「明暗を分けるのは打撃よりも守備でしょう。2年連続12球団最多失策の汚名を返上すべく、阪神は守りの強化に力を入れている。佐藤はプロの打球への対応に時間がかかるし、糸井は膝や足首に古傷がある。矢野監督がどこまで我慢できるか」(同前)