独自の認知症対策で注目を浴びている自治体がある。鳥取県では、自治体と大学、公益財団法人が一体となり認知症予防プログラムを開発。プログラムによる認知機能の改善が認められ、全国の自治体に広がりを見せている。『週刊ポストGOLD 認知症と向き合う』より、認知症予防の最新の取り組みを紹介する。
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鳥取大学医学部で長年認知症の研究を続ける浦上克哉教授は、次のように警鐘を鳴らす。
「認知症の予備群ともいえるMCI(軽度認知障害)の人は、私たちの研究では認知症患者の1.5~2倍はいると考えています。このままいくと、2025年には最大で1400万人のMCI患者が発生する可能性があります」
放っておくと認知症に移行していくとされるMCIだが、早期に発見して適切に対処すれば認知症への進行を遅らせる、あるいは症状の改善を期待できる。
そこで注目されているのが、鳥取県が独自に展開する「とっとり方式認知症予防プログラム」だ。週1回2時間、独自に開発した運動や知的活動のプログラムを24週間繰り返して行なうことで、認知機能や身体機能の改善を目指す。実証実験などを通して成果が認められ、現在では全国の自治体で取り入れられ始めている。前出・浦上氏がここに至る経緯を解説する。
「私が鳥取県の琴浦町で認知症予防の取り組みを始めたのは、2004年です。誰もが楽しく参加できる方法を模索しながら、『運動』『知的活動』『コミュニケーション』の3つを取り入れた認知症予防プログラムを開発しました」
当初からプログラムの効果に自信はあったが、一方で悔しい思いをしたという。
「“科学的なエビデンスがない”という指摘を度々、受けました。それどころか、“認知症は治らない病気だからエビデンスのない予防などやっても意味がない”と言う研究者もいました」(浦上氏)
そんななか、2016年に転機が訪れた。
「鳥取県の平井伸治知事と、私たちが取り組む認知症予防について話をする機会がありました。そこで重要性を認めてもらい、補助金を受けられるようになったのです」(浦上氏)
そしてその年、県下の伯耆町をモデルとしてMCI患者約140人を対象にした実証実験が行なわれた。
「対象者を約70人ずつ2つのグループに分け、1年4か月にわたって検証しました。それぞれのグループに時期を分けてプログラムをこなしてもらうというものです。どちらのグループも、プログラムを通して認知機能が向上することが分かりました(別掲図1)」(浦上氏)