具体的な運動の解説は図3に掲載した。実際にやってみると分かるが、足踏みする下半身と、腕を交互に前に突き出す上半身を別のリズムで動かし、さらにそこに声をぴったりリンクさせるのは意外と難しい。しかも、「3の倍数」や「5の倍数」が、どの数字だったかを思い出しながらの運動になるので、一度、頭の中が混乱し始めると、高齢者に限らず、うまく続けられなくなってしまう。
これが認知と運動を組み合わせた「コグニサイズ」で、難易度は決して低くない。初めてトライする人はほぼ失敗するだろう。浦上氏は「それが狙いです」と笑う。失敗がきっかけでも、様々な人と楽しく会話することは、脳にとってよい刺激となるのだ。ただし、認知症が進んでしまってからでは効果は限定的だ。
「MCIの段階の人であれば、一連のプログラムを週に1回でも続けることで認知機能の維持・向上を期待できるでしょう」(浦上氏)
少しでも早い段階でMCIに気付くことが、将来の状態を大きく左右することになるのだ。