女優がかつての自身の写真を振り返るシリーズ「あの頃のわたし」。今回は、ドラマ『東京ラブストーリー』で清純派女優としてブレイクを果たし、現在は実力派として鳴らす有森也実が、転機となった約20年前の写真集の思い出を撮影者の小澤忠恭氏と語り合った。
──有森さんの映画デビュー作『星空のむこうの国』(1986年)の頃からファンでした。なんとも言えないファンタジーの世界の不思議な美少女でね。
有森:でも、当時は小澤さんに撮っていただいてないですよね。
──そうそう、この写真集の前に、30代になるかならないかの頃からアサヒカメラや週刊誌などで撮らせてもらいましたね。
有森:新橋駅前で撮った時はすごく印象的でした。
──ああ、雑踏の中で一人で立たせて撮ったよね。一人で怖くないかな? って心配しながら撮ってました。
有森:いやいや、私は小澤さんが人目も気にせずに地面にベターッと寝転がって撮ってる姿に圧倒されたの。私はその視点からこの街を見たことがないから。この目線に委ねようと思えたきっかけでした。
──それは嬉しいね。僕の中では有森さんはとにかくファンタジー。だからこの写真集もファンタジーっぽく撮って、その中でもお気に入りなのが着物のカット。襟元の浮きの部分に色っぽさがあってさ。
有森:色っぽさは不可欠だろうし、小澤さんに撮っていただくならリアリティとファンタジーを行ったり来たりする写真集になると思ってましたよ。
──よく言っていただいた! この時は伊豆の松崎の、映画の撮影でも使われていた今はなき旅館で撮ったんだけど、近所の漁船に「ちょっと女優を乗せてくれ!」って頼んで飛び込みで撮ったりして、思い出深いね。
有森:懐かしいです。お借りしたお家の猫がたまたま私のお尻の所に来てお昼寝始めたりね。
──僕が太腿あたりを撮りたくて、遠慮がちに「裾上げて」と言ったら「太腿を撮りたいならそう言えばいいのに」と、さっぱりと言ってくれました。
有森:だって私はあくまで素材で、調理するのは小澤さん。そこは信頼しきってますから。