新型コロナ禍で気軽に外食や移動ができない中で、ストレスがたまっている人も多いのではないだろうか。自粛期間が長引くと、どうしても気持ちが滅入ったり、疲れやすくなったりするような気もする。こんなときこそ、元気を取り戻してくれる「食」のありがたみを再発見してみてはどうだろうか。
最新巻の第23集も話題になっている大人気マンガ『深夜食堂』著者・安倍夜郎氏と、共著で『四万十食堂』『オアシス食堂』などの名店案内を出している左古文男氏が「中高年が楽しむスタミナ料理」について語り合った。コロナを乗り切る「食」の力とは──。
外食のありがたさをあらためて実感
左古:コロナの収束が見通せない状況なので、飲食店の苦難は続きそうですね。いわゆる“夜の街”と呼ばれる歓楽街に対する世間の風当たりはまだ強いようだし、コロナ禍が長引けば長引くほど閉店を余儀なくされる飲食店が増えてきますよね。
安倍:深夜食堂(めしや)は、新宿ゴールデン街にあるという設定なので、地名でいうと歌舞伎町なんですね。
左古:歌舞伎町の中心街は客足が激減してますし、ゴールデン街も例外ではないと思います。安倍さんもですけど、ぼくもゴールデン街にはボトルをキープしてる店があるから顔を出したいんですけど、感染拡大で緊急事態宣言が出されたりすると、なかなか行けませんよね。ゴールデン街はインバウンド客で賑わっていたから、コロナ禍でかなりの打撃を受けたでしょうね。
安倍:そうだと思います。まあ、ボクが行く店はいつも空いてますけどね(笑)。店によっては外国人観光客で潤っていたところもあるでしょうから、大変だろうと思います。有名な駅前の食堂が閉店したというニュースもありましたけど、コロナ問題を機会に自主廃業した店も少なからずあるんでしょうね。
左古:倒産の集計には入らないけど、経営者が高齢だったり、跡継ぎがいないという理由から自主廃業した店もあると思います。過去に取材させていただいた人気店でも何軒か閉店したところがあります。外出を自粛してると、外食のありがたさをあらためて実感するんですよね。ズーム飲み会もやりましたけど、ぼくとしてはいまいち楽しくなかった。飲食店のありがたさというのは旨い料理が食べられるだけじゃなくて、店主や顔なじみの常連客と顔を突き合わせてたわいのない話ができることですよね。『深夜食堂』のコピーじゃないけど、いい店というのは小腹も心も満たしてくれる。
安倍:そうそう。重要なのは、その場ですよ。ハレの場所というわけではないけど、日常とは違った場所ですからね。
左古:家庭では味わえない味や時間が楽しめる特別な場所なんですよね。食べることだけが目的なら出前やテイクアウトでもいいんだけど、それだけじゃない。コロナ禍が収束しないうちは大声で外食しましょうとはいえませんが、緊急事態宣言が解除されたら、感染対策をしながら外食を楽しもうと思っています。