生物の体内でも作られるアミノ酸の5-アミノレブリン酸(5-ALA)は、日本では脳腫瘍や膀胱がんの診断薬として保険承認されている。近年、5-ALAはマラリア治療薬としても臨床試験が進んでいる。その研究過程でマラリア遺伝子にあるG4という特殊構造が新型コロナにも複数存在しているのが判明、試験管内だが増殖抑制効果を確認した。
5-ALAは生物の細胞内に約2000個あるミトコンドリアで作られるアミノ酸で、エネルギー代謝に関し、中心的働きをする。5-ALAは人間では、17歳をピークに減少することもわかっている。
5-ALAが8個集まるとプロトポルフィリンという化合物になる。動物では、これに鉄が結びついてヘムになり、血中でヘモグロビンの成分になって体内に酸素を運ぶ。植物だとプロトポルフィリンとマグネシウムが結びついてクロロフィルを構成する。
この5-ALAは10年以上前から、医薬品をはじめサプリメントや化粧品などに使われており、安全性が高い物質とされている。
長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北潔教授に話を聞いた。
「私たちは以前から、マラリアの研究を進めており、現在はラオスで5-ALAのマラリア原虫の増殖の抑制、治療効果を検証する臨床試験を開始しています。その研究ではマラリアの遺伝子にグアニン分子が4つ集まるG4という特殊構造があり、これは増殖阻害のメカニズムですが、マラリア感染動物に5-ALAを投与すれば、このG4にプロトポルフィリンやヘムが吸着し、マラリア増殖を抑えられると考えています。
実は新型コロナの遺伝子にも、G4構造が複数存在していて5-ALA投与で増殖抑制が可能ではないかと研究を始めました。その結果、試験管内ですが5-ALAに新型の増殖抑制効果が見られました」
5-ALAは、すでにがんの診断薬として承認されている。服用後、がん細胞に取り込まれ、光を当てると5-ALAを取り込んだ、がん細胞だけが光り、特定できる。