19才で出会った彼と、22才で結婚し、翌年出産。屈託のない笑顔で娘のことを語る彼女は、至って普通の若いママだ。ただ、彼女は21才でステージIVのがん宣告を受けた──命がけの出産を決意した彼女は、その胸中を日記に克明に書き記していた。
【2021年2月17日(水)】
〈使える薬が減るのって本当命削られてる気になるんだよね。コレが命綱だから。この薬たちが効かなくなったら、もう治療法はない。死を待つだけになる。次の薬がどのくらい効き続けてくれるか。今回の薬は4か月しか効かなかったから〉
青森市在住の遠藤和(のどか)さん(23才)は、ステージIVの大腸がんを患う。夫・遠藤将一さん(29才)のサポートを受け、この2月中旬は県立病院で、抗がん剤治療を受けた。
「朝一で採血をします。約1時間後に結果が出たら診察を受け、問題がなければ治療が始まります。ベッドが30台ほどずらっと並ぶ抗がん剤治療用の部屋で、6時間ぐらい横になって点滴を受けるんです」(和さん・以下同)
和さんの胸元には、ポートと呼ばれる“薬剤タンク”が埋め込んである。
「通院時に、胸元に針を刺して体内のタンクに薬剤を補充します。帰宅後、48時間かけてゆっくり体の中に抗がん剤が入っていく仕組みです」
抗がん剤治療は複数の薬剤を組み合わせて行われる。抗がん剤はがん細胞を攻撃するが、同時に正常な細胞にも影響を与え、それが副作用として表れる。治療後は、その副作用と闘う日々が続く。
「ひどい倦怠感で起きていられず、吐いてしまうことも珍しくありません。倦怠感は1週間ほど続きます。トイレ以外は横になっていることしかできません。ご飯も食べたくないし、水分も摂りたくないんです」
抗がん剤の効果は人それぞれで、しばらくはその薬剤が効いたとしても、治療を続けていくうちに「薬剤耐性」がついて効果が減少することがある。
「主治医の先生から“薬を変えましょう”という提案があり、2月22日からこれまでとは別の抗がん剤を使った治療が始まりました。新しい抗がん剤はのどがしびれてしまうので、冷たいものが飲めない。しんどいです」
「お母さんがいない子になる準備と覚悟ができるなら」
【2021年2月17日(水)】
〈今日の(娘の)健診は行けないと思ってたから、行けて嬉しかった。娘の成長を1番感じられるのはこの健診な気がする。そろそろ離乳食も始めようかっ!! たのしみにしてたの。食育!! なんでも食べられるようになってほしいけど、それよりも食事を楽しんでほしいな〉
病院へ行ったその足で、娘の健診へ――和さんは、生後半年の女の子の母親だ。
「初めてのBCGワクチン接種で、娘は大号泣でした。頑張ってえらかった! 注射後はしばらくグズグズしてたけど、抱っこで寝てくれました。いまでは抱っこするだけで肩と腰がバキバキになります。この前まであんなに小さかったのに(笑い)。うれしいような、寂しいような……子育てってすごくあっという間なのかな」