平成の時代に、相撲ファンの心に残る多くの名勝負を繰り広げた横綱・貴乃花。そんな「平成の大横綱」と、好角家としても知られる人気モデル・市川紗椰の初めての対談が実現した。貴乃花が考える相撲の基礎、力士の癖の見抜き方について、市川が聞く。
市川:現役時代のお姿はテレビで拝見していました。
貴乃花:ありがとうございます。市川さんは好角家として有名ですよ。
市川:恐縮です(笑い)。実は先ほど安治川親方(元・安美錦。週刊ポストの特集記事で市川と安美錦が対談をした)とお話していました。現役最後の相手ですよね。
貴乃花:ええ。いい技巧派の力士が出てきたと感じたのを覚えています。胸を出した時、当たり方が上手だと思いましたね。足腰の柔らかさもあった。日々の稽古で基礎練習を反復して正確にやっている証拠です。最も大切なことですがなかなかできることではない。だから彼は強く、息の長い力士になれたのだと思います。
市川:貴乃花さんはいつその「基礎の重要性」を感じたのですか?
貴乃花:入門直後です。大きい相手と無差別級でやる以上、日々の鍛錬をきっちりやらないと体が壊れてしまうと思いました。
市川:さすがですね。現役時代、対戦相手の研究はされていましたか?
貴乃花:もちろん。ビデオ分析と、それまでの対戦が体に染みついているので。
市川:初顔合わせの時は?
貴乃花:相手の癖を見抜きます。歩き方とかを見て。
市川:歩き方!? そんなところを見るんですか?
貴乃花:人間には必ず癖があります。持って生まれた骨格によって違う。歩き方一つでも人によって使ってない部分があるんですよ。そこが弱点になるから入念に探して、自分の得意な型を入れて倒す方法を考えます。逆に言えば強くなるには癖を直すのが重要なのですが、これに時間がかかる。