市川:ちなみに貴乃花さん自身にはどんな癖が?
貴乃花:小さい頃に足のスネ、いわゆる“弁慶の泣き所”を真っ二つに骨折してしまいまして。日常生活は問題なかったのですが、力士として稽古をする中で無意識に庇っており、微妙にバランスが崩れていたことに気づきました。
市川:相撲をやっていなければわからない程度の癖だったのですね……。
貴乃花:そうですね。それと初顔についてはもう一つ。彼らの多くは若い新進気鋭の力士で、必ず得意な技を持っています。それをやらせず自分の型に持っていくことです。
市川:まさに横綱相撲。
貴乃花:そして絶対「勝った」と思わないこと。相手は捨て身で来ますから、油断すると足を掬われます。番付が上だと負けられない土俵が続きます。だから相撲は長く続けるのが難しい。特に横綱は、なるより“なってから”が大変なんです。
【プロフィール】
貴乃花光司(たかのはな・こうじ)/1972年生まれ。東京都出身。第65代横綱。生涯戦歴は794勝262敗、幕内優勝22回。三賞受賞は殊勲賞4回を含む9回。引退後は一代年寄・貴乃花として日本相撲協会の要職を務め、2018年10月に退職。現在は一般社団法人貴乃花道場を立ち上げ、相撲の普及・発展活動を行なっている。
【プロフィール】
市川紗椰(いちかわ・さや)/1987年2月14日生まれ。愛知県出身、米国・デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。身長168cm。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』(集英社刊)が好評発売中。
取材/鵜飼克郎 撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2021年3月19・26日号