子供を持ちたいと考えたとき、何を一番、心配するだろうか。生まれてくる子供に不安がない生育環境を与えることができるか、そのための費用をまかなえるのかということを、やはり考える人が多いだろう。新型コロナウイルスの感染拡大により、家族計画が大きく狂ってしまった日本のカップルたちについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。
* * *
フランスで2021年1月の出生数が、前年同月比で約13%減り、過去45年間で最大の落ち幅になったと報道された。理由には、新型コロナウイルス感染症の拡大によるロックダウン(都市封鎖)と着床時期が重なっていることが指摘されている。母子感染を気にしたり、万一のことがあっても医療機関で満足な治療を受けられないという不安が市民の間に広がったことが原因として挙げられているようだが、我が国ではどうか。
民間シンクタンクの日本総研によるレポートによれば、元より出生数減少の傾向はあったものの、2021年の出生数はマイナス7.5%まで落ち込む見込みであり、これまでの少子化の想定より10年程度前倒しの状態で進んでいくと懸念している。婚姻数についても同様に大幅に下がっており、出生数がさらに下がる可能性も指摘している。
「もう子供を産むかどうかは考えられなくなりました。今は眼前の生活で精一杯。コロナがなかったら、と考えたこともありましたが、それどころではない、というのが本音です」
都内の飲食店経営・上野良輔さん(仮名・30代)は、昨年1月に妻(30代)と入籍。挙式も予定しており、早く子供が欲しいと妻とも話していた矢先、コロナ禍に見舞われた。
「年齢的にも、早めに子供が欲しいね、と相談していたんです。しかし、コロナで全部吹っ飛びました。まず結婚式が緊急事態宣言によりキャンセルになり落ち込んでいたのですが、何より、生活基盤である商売が全く立ち行かなくなり、資金繰りに奔走する毎日です」(上野さん)
都内や近郊に数店出していた飲食店も、その半分を閉めて、なんとか食べていけるだけの当面の現金だけは確保した。だが、もはや子供を産むどころではなくなり、夫婦二人が生きていくのに精一杯という上野さん。コロナ禍の収束にも期待するが、子供を産みたいという前向きな気持ちにはなれなくなったと思いを吐露する。