「コロナが収束しても、以前のような生活に戻るとは考えがたい。子供を産んでも苦しい生活が続くなら子作りは避けたいと思うし、ゆとりができたらとベストなタイミングを待つと、私たちの年齢の問題も出てくる。いったい、子供を持つのによいタイミングがいったいいつになるのか、見当もつかない。子供を作らないまま、ズルズルと時間だけが過ぎていきそうな気配も感じています」(上野さん)
関西在住の元会社員・吉永愛美さん(仮名・20代)もまた、コロナ禍で人生設計が大きく狂ったと話す。
「コロナ前は中堅商社に正社員として勤めており、結婚と出産を経て、時短勤務の契約社員として仕事をしていました。子供が小さかったのですが、社内託児所に預けて仕事ができますし、ゆくゆくは正社員に戻りたい、もう一人くらい子供が欲しい、と思っていました」(吉永さん)
そんなことを夫と相談していたのが昨年の始め。その後間も無くコロナ禍に陥ると、吉永さんにも大きな影響が出た。
「まず、感染を防ぐため、社内託児所が閉鎖になりました。ママさん従業員は全員在宅勤務になりましたが、業務自体が減少してしまい、無給の自宅待機を要請されました。すると、本来は一年ごとの更新だった契約が、前倒しで終了するかもしれない、そんな噂まで回ってくるようになったんです」(吉永さん)
結局、今年の3月までの契約だったはずが、昨年末で契約は打ち切りに。会社都合ということで、お詫び代わりに幾らかの上乗せ金も手にしたが、これでは「二人目」などは考えられず、目下、子持ちでも働ける職場探しに翻弄されている。
「実は一人目を産んだ時も、夫とかなり相談をしました。若い世代の生活が一向に良くならず、子供を産んでも生活が苦しくなるだけではないか、それなら子供を産む意味はあるのか、と。でも実際、産んでみて、本当によかったと思ったんです。お互い、仕事へのやりがいもさらに大きく感じるようになって、二人目を産んでもっと頑張りたいと。でも今は、その仕事すらない」(吉永さん)
元より「結婚がしにくい」雰囲気が強くなっていた我が国に吹き荒れたコロナの猛威。皆が目先の生活のために懸命になっているが、子供を持つことを避けている現実は見て見ぬ振りなのか、日々の対応に追われて「それどころではない」ということで、おざなりにされていとしか思えない。これ以上の少子化がすすまないように、実効性を優先した対策も考えるべきだろう。最悪の事態へ、さらにギアを上げて突き進んでいる現実は、生半可な経済支援や環境整備だけで食い止められるものではなくなってきている。